29Lib 分館

図書館・情報学関連の雑記、読書ノート、音楽ノート、日常生活の愚痴など。

1970年代と1990年代以降の恋愛「表象」の比較

2010-04-29 12:30:40 | 読書ノート
谷本奈緒『恋愛の社会学:「遊び」とロマンティック・ラブの変容 』青弓社ライブラリー, 青弓社, 2008.

  日本における1970年代の恋愛観と1990年代以降のそれの比較。雑誌記事の分析から、1970年代には結婚または失恋という「結末」を重視した恋愛観が主流だったが、1990年代になるとアプローチ法など恋愛の「過程」が重視されるようになったという。その上で、結婚は社会秩序に迎合するものとして「真面目」、恋愛は快楽をもたらす「遊び」として対置させられている。

  議論はわかりやすく、時代の変化もよく掴める。また、記述も冷静であり、この手の著作にありがちな「同性または異性を断罪をする!!」的なヒステリックな部分が皆無であるのは好ましい。ただ、データに偏りがあるのではないかと疑わせるところと、「バルトが…」「ゴフマンが…」という学者の引用が本書の装いをいかめしいものにしているのがもったいない。後者は分析にあまり貢献していない印象なので、もっと持っているデータを見せてくれるほうが面白くなったように感じる。
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急ぎの仕事のBGMにするとはかどる

2010-04-27 23:27:47 | 音盤ノート
Jeff Mills "Mix-Up Vol.2" SME, 1996.

  エレクトロニカ、というか直球ど真ん中のミニマルテクノ作品。1995年、新宿時代のリキッドルームでのライブ録音である。他に石野卓球、ケン・イシイ、Derrick Mayなどを収録したSony Music EntertainmentによるDJミックスCDシリーズの一つであり、このアルバムは英国でも"Live At The Liquid Room Tokyo"(React, 1996)の名で発売されている。残念ながら国内盤と輸入盤ともに現在は新品では入手できない。

  このアルバムで見せるDJプレイは、後先のことを考えずに最初から全力疾走である。同じシリーズのDerrick Mayを聴くと、緩急をつけ全体の構成を良く練ってDJしていることがよくわかる。一方、Millsは最初からアクセル全開で、高速かつ硬質なリズムをベースに攻撃的に曲をひたすらつなげている。この頃はまだ、後年の"Exhibitionist" (Axis, 2004)で聴けるような複雑でなめらかな多彩な打楽器音も無く、骨格だけの四つ打ちバスドラムが鳴らされる中、インベーダー音──日本盤のオビには「宇宙人DJ現る!!」とある──が目まぐるしく通りすぎてゆく。荒々く激しい。聴いているとアドレナリンが大量放出されること請け合い。

  最初期の"Waveform Transmission"のシリーズ(Vol.1 1992; Vol.3 1994)よりも断然優れており、テクノを知るのに適した作品だが、廃盤なのはもったいない。
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日本人にとってはイラストがおそらく奇怪

2010-04-25 21:43:18 | 読書ノート
アイリーン・マグネロ『マンガ統計学入門:学びたい人の最短コース 』神永正博監訳;井口耕二訳, ブルーバックス, 講談社, 2010.

  タイトルに「マンガ」とあるけど、イラストと言った方が正確。この種の専門分野の欧米からの翻訳もので「マンガ」と銘うたれていたら、モンティパイソンの作品に出てくるような写実主義的なイラストのことだと考えたほうがいい。いわゆる「漫画」で想像されるような、線を使った動きのある絵ではなく、静止したポーズを捉えた面中心の絵である。慣れないと気持ち悪い。

  中身は、ゴルトン、ピアソン、フィッシャーらの業績を追った統計学史となっている。彼らが直面・克服しようとした問題から、統計における各種概念について説明するのである。平均から検定・多変量解析までカバーしており、新書のページ数ではこれらの細かいところまでさすがに分からないが、適用対象や基本的な考え方をなんとなくつかむことができるところがポイントか。入門書というより、統計学をちょっとかじったことのある人向けの副読本と考えた方がいいと思う。索引も付いているよ。
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ランガナタンのインド人としての業績

2010-04-22 18:59:59 | 図書館・情報学
  『統計学とは何か』1)という本を読んでいたら、「ランガナサン(Ranganathan)」という名前に遭遇した(p.291)。なんでも、20世紀初頭に短い生涯をおくったインド出身の天才数学者、ラマヌジャン(Ramanujan)についての伝記を書いた人らしい。図書館・情報学の世界では、図書館の五原則やコロン分類法で有名な同姓の人物がいる。ひょっとして同一人物?と思って調べてみたらそうだった。図書館関係の著作が並ぶ彼のビブリオグラフィ2)の中に、"Ramanujan"という場違いな単語が見える。

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1) C.R.ラオ『統計学とは何か:偶然を生かす』藤越康祝ほか訳, ちくま学芸文庫, 筑摩書房, 2010.
2) Warldcat / Ranganathan, S. R. http://worldcat.org/identities/lccn-n50-53919
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「高校生」と言わずに「英語をもとにした」と言うべき

2010-04-20 22:48:01 | 読書ノート
横山雅彦『高校生のための論理思考トレーニング』ちくま新書, 筑摩書房, 2006.

  前半3章分は日本語論、後半3章が論理トレーニングという内容である。後半は、「論理的」とはどのような思考法のことをいうのかが良くわかってためになる。僕は形式論理学を大学で一応習ったくちだが、テキストをクレーム/データ/ワラントに分解する分析法は初めて聞いた。その切れ味はかなり鮮やかだ。もう少し深く知りたいのだが、参考文献リストが付いていないのが残念である。(トゥルーミン・モデルって言うの?)

  難点は、前半・後半どちらも食い足りないこと。前半では「日本語に論理は無かった」という大胆な主張をしているが、もう少しデータとワラントが必要である。後半のトレーニング部分も独習には不十分な量であり、もっと紙数を割いてほしいところ。前半・後半それぞれに分けて本にした方が良かっただろう。
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安物ながら電子ペットの魅力が伝わる

2010-04-18 21:12:27 | チラシの裏
  今回のマクドナルドのハッピーセットのおもちゃは良い。Sega製のi-Dog。

  子どものためにハッピーセットをしばしば購入するのだが、いつもの付録のおもちゃは機械的な仕掛けよりキャラクターの魅力を重視したものが多い。キャラクターの模型のついでに音が出たり光ったりする機能があるという順番だ。500円以下の商品のおまけとしてはこの程度が妥当なんだろう。

  今回付録のi-Dogは「音が出る」系のおもちゃなのだが、キャラクター性が無いかわりに、その機械的な仕掛けはいつもの付録より高度である。鳴き声二種類と音楽一つが、熱を感知して鳴らされる。手にとるとワンワン鳴いたり、音楽を奏でたりするので、単身赴任の身にはなかなか楽しい。もう一種類手に入れてみようと思う。
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丸い音色で尖った音楽を紡ぐ

2010-04-15 19:33:42 | 音盤ノート
Mouse On Mars "Niun Niggung" Domino, 1999.

  エレクトロニカ。このユニットについては、このアルバムと続く"Idiology" (Domino, 2001)しか僕は聴いたことがない。このアルバムは、丸っこい・かわいらしい・人なつっこい音で構成されており、聴きやすい。擬音を使えば「ぶよぶよ」または「ぽにょぽにょ」したイメージだ。ビートも明瞭かつダンサブルで、アンビエント的ではない。

  ジャケットは歯ブラシ(?)のものとオランウータンのものの二種類ある。僕が持っている英国盤は12曲収録だが、米国盤は13曲収録で、収録曲も曲順も違うようだ。
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モテ本にも非モテ本にもなりきれていない

2010-04-13 11:27:36 | 読書ノート
澁谷知美『平成オトコ塾:悩める男子のための全6章』双書Zero, 筑摩書房, 2009.

  高校生・大学生向けの叢書シリーズの中の一冊。面白いところもあるけれども、著者の「社会が決めた常識から解放してやる」的な態度が鼻につく。パターナリスティックな男性観を捨てよとは言っても、平均的な女性は稼げる男性が好きだ、という現実は押さえておいてほしいところ。また、前半で非モテを肯定し薦めつつ、後半の暴力・童貞・売春に関する章では女性が求める男性像を提示する議論になってしまっているのは矛盾だろう。生身の女性の要求についていけないからこそ非モテなのだ。モテようと考えている若年男子たちは、本書の後半に学び、前半は捨てる。そんな使い方がいいだろう。
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打楽器を大量に使いながら熱くならない

2010-04-11 23:29:14 | 音盤ノート
Dave Liebman "Lookout Farm" ECM, rec.1973.

  ジャズ。1970年代のMiles Davis組の中で、技術的にもっとも優れたSax奏者なのがDave Liebman。これは彼の代表作なのだが、何故か未CD化のまま現在に至っている。同じコンセプトで録られた"Drum Ode"(ECM, 1974)はCD化されているのに、"Lookout Farm"はなぜLPのまま放置されているのだろうか? ECMのやることはよくわからない。

  1970年代の作品らしく、ジャズ一辺倒はでなく、エスニックであったりロック的であったりする。編成は、Sax, Piano, Bass, Drumsのカルテットに、ギター一名と打楽器5人が加わる。全三曲のうち、カルテットでの演奏である三曲目はコルトレーンのようになってしまうが、一・二曲目は打楽器中心のアンサンブルが十分活かされている。面白いのは、打楽器が激しく鳴らされても、何やら清廉な印象を残してしまうところである。グルーブの紡ぎだし方が分析的で、どちらかと言えばドラマチックな編曲の方が心に残ってしまう。グルーヴ感が腰に来ないとでも言うべきか。その意味で、打楽器中心の編成のわりには踊れる音楽にならず、耳で楽しむ音楽になっている。これは狙いどおりなのかどうかわからないが、珍しい感覚をもたらしていることは確かである。
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僕の学校の入学式では見られないこと

2010-04-08 08:53:37 | チラシの裏
  女子大学の入学式には、近隣の大学から、サークル勧誘をするために男子学生が来るものだ。今年も、そういう光景が随所で見られたことだと思う。ところが、僕が勤務する学校法人は、巨大ホールを借りて、グループ傘下の小中高校・短大・大学の新入生をまとめて一気に入学式をやってしまう。これでは、他大の男の子が短大生にターゲットを定めて勧誘活動をすることは困難である。このため、学生が同年代の男の子と知り合う機会が失われてしまっている。来年度からは、勤務先の学校法人が方針を変え、学校別に入学式を取り行う、といううわさがあるけれども、大歓迎である。
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