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地方メディアの生残りと地方情報の流通環境維持の努力についてルポ

2024-08-04 21:09:00 | 読書ノート
松本恭幸『地方メディアの挑戦:これから地方紙、地方出版・書店、地方図書館はどう変わるのか』風媒社, 2023.

  インターネット情報源が普及した後、地方の紙メディアの出版流通はどう変化したか、について伝えるルポルタージュ。図書館の話もある。著者は摂南大学の先生で、風媒社は名古屋に本社のある出版社である。

  地方紙、地方出版社・小売書店、地方図書館の三部構成となっている。地方紙はどこも「読者の高齢化とインターネットの普及で購読者が激減し、デジタル化を図るもののマネタイズが難しい」というパターンにハマっている。地方出版社や書店も読者の減少で徐々に体力を削られて...という状況の中、本書は比較的うまくいっている事例を集めている。地元密着方のweb情報源となって読者から記事を投稿してもらう、一定額を預けて書店員に購入タイトルを選書させる、カフェなど別業種と書店とのスペースの共有、などである。

  図書館のところでは、山中湖村、小布施町、瀬戸内市、都城市、札幌市(の図書・情報館)、西之表市、岐阜市、鳥取県、さらにまちライブラリーや地方のアーカイブスが取り上げられている。あまり知られていない地方の視聴覚ライブラリーの現状についても頁が割かれている。

  これを読めば地方出版の未来を楽観できるというものではないけれども、真剣な生残りの努力を続ける地方新聞社・出版社・書店について知ることは出版関係者の刺激になるのではないだろうか。本書が扱っているような「地方情報の流通環境の維持」についてはこれまであまり考えられてこなかったと思う。その点で貴重なルポである。
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