シドニー・ディツィオン『民主主義と図書館』川崎良孝ほか訳, 日本図書館研究会, 1994.
米国公共図書館史の基本書籍として知られている文献である。19世紀に、図書館を公費で運営しようと目指した個人またはグループの、思想や属性、彼らを取り巻く時代背景について探っている。
とはいえ、けっこう身もフタも無いことも書いてある。
というわけで民主主義より金である。といってもコミュニティが豊かならば、必然的に公共図書館ができるというわけではないので、設立に関わった人々の思想などを探る意義は大きい。
しかしながら、現在の日本では、コミュニティの豊かさ自体が揺らいでいる。そのような状況に陥っていても、公共図書館を支持するときに使われるロジックは、経済成長が続いていた時代と変わっていないという印象を受ける。実を言うと、公共図書館を語るときに使われる「民主主義」という切り口に違和感を覚える。こういうのは僕だけだろうか?
米国公共図書館史の基本書籍として知られている文献である。19世紀に、図書館を公費で運営しようと目指した個人またはグループの、思想や属性、彼らを取り巻く時代背景について探っている。
とはいえ、けっこう身もフタも無いことも書いてある。
結局のところ決定的な要因は経済力であった。そして、商業と工業で大いに繁栄する町だけが経済的な余裕をもち、新しい公的機関[公立図書館]に資金をつぎ込むことができたのである。(p.8)
公費支弁の無料図書館の確立には、前提としていくつかの社会的背景があり、この点はほとんど自明である。こうした背景としては、コミュニティが財政的に図書館を支えるに足る経済力をもつこと、図書館サービスを経済的にするに足る人口密度(都市部で図書館が成功した後にはじめて、村落部での図書館が登場してきた)、教育全般を公費で支弁することについての好意的な雰囲気、それに文化環境がある。(p.211)
というわけで民主主義より金である。といってもコミュニティが豊かならば、必然的に公共図書館ができるというわけではないので、設立に関わった人々の思想などを探る意義は大きい。
しかしながら、現在の日本では、コミュニティの豊かさ自体が揺らいでいる。そのような状況に陥っていても、公共図書館を支持するときに使われるロジックは、経済成長が続いていた時代と変わっていないという印象を受ける。実を言うと、公共図書館を語るときに使われる「民主主義」という切り口に違和感を覚える。こういうのは僕だけだろうか?