北條雅一『少人数学級の経済学:エビデンスに基づく教育政策へのビジョン』慶應義塾大学出版会, 2023.
少人数学級の効果の検証。統計データが用いられているものの、詳細は省かれており簡易な表現にまとめられている。専門書ではあるが、広く読者にアピールする狙いなのだろう。著者は駒沢大学の教授である。
第1章で、先行研究のレビューおよび著者自身の研究から、少人数学級には効果があることが示される。標準偏差を1としたとき、おおよそ0.1程度の学力の向上が見られるとのことである。その上昇幅は、社会経済的地位の低い家庭出身の子どもほど大きい。しかし、少人数学級には効果があるというのはすでに知られている話で、問題は費用対効果が低いということだったはずである(例えばハッティ (2018))。この疑問に対して、さらに著者は費用対効果を計算することで答えている。いくつかの仮定を置いた推計によれば、教員の人件費増加分に比べて児童の将来の収入の増加分のほうが高くなるので、少人数学級はペイするという。このほか、少人数学級によって児童の非認知能力が向上し、また教員の負担が減るというメリットもあるとのこと。
以上のように、本書では少人数学級の導入が支持されている。ただし、著者が懸念しているのは学級数増加に伴う採用の問題で、採用数を増やせば教員の質の低下が起こる可能性がある。前述のハッティもOECDのシュライヒャー (2019)も少人数学級よりも質の高い教員の方を重視している。とすると、次の課題は、質の高い教員の採用(すなわち待遇改善)と少人数学級のどちらがコスパが良いかを検証することになるのだろう。
少人数学級の効果の検証。統計データが用いられているものの、詳細は省かれており簡易な表現にまとめられている。専門書ではあるが、広く読者にアピールする狙いなのだろう。著者は駒沢大学の教授である。
第1章で、先行研究のレビューおよび著者自身の研究から、少人数学級には効果があることが示される。標準偏差を1としたとき、おおよそ0.1程度の学力の向上が見られるとのことである。その上昇幅は、社会経済的地位の低い家庭出身の子どもほど大きい。しかし、少人数学級には効果があるというのはすでに知られている話で、問題は費用対効果が低いということだったはずである(例えばハッティ (2018))。この疑問に対して、さらに著者は費用対効果を計算することで答えている。いくつかの仮定を置いた推計によれば、教員の人件費増加分に比べて児童の将来の収入の増加分のほうが高くなるので、少人数学級はペイするという。このほか、少人数学級によって児童の非認知能力が向上し、また教員の負担が減るというメリットもあるとのこと。
以上のように、本書では少人数学級の導入が支持されている。ただし、著者が懸念しているのは学級数増加に伴う採用の問題で、採用数を増やせば教員の質の低下が起こる可能性がある。前述のハッティもOECDのシュライヒャー (2019)も少人数学級よりも質の高い教員の方を重視している。とすると、次の課題は、質の高い教員の採用(すなわち待遇改善)と少人数学級のどちらがコスパが良いかを検証することになるのだろう。