Stephen Karetzky Reading Research and Librarianship : A history and analysis Praeger, 1982.
米国における20世紀前半の読書研究史。図書館情報学の領域にも「シカゴ学派」なるものがあってかつて影響力を持っていたのだが、その勃興史でもある。著者はユダヤ系らしく、イスラエルに関する著書も二冊書いている。個人的な事情を記すと、大学院に進学した25年ほど前に古本で購入したが、一行も読まないまま積読になっていた。今年サバティカルを得たおかげでようやく読了できた。
20世紀前半の中でも、特に1930年代のダグラス・ウェイプルズの業績に焦点が当てられている。もともと彼は教育学者だったが、シカゴ大に図書館学の大学院ができるとそこに移動し、読書研究を開始する。図書館員による読書研究は1920年代にも存在していたが、統計学的に未熟で、また読者や読書対象を分類するカテゴリも十分検討されたものではなかったらしい。そうした難点を克服した成果がウェイプルズの研究だった。彼はよく計画された調査と洗練された統計によって、読者の属性別の読書傾向について明らかにした。彼によって図書館学は科学となり、社会学のメディア研究と成果が共有されることになったと評価される。ただし、統計の導入は現場の図書館員の反発を招き──数字で読者を判断してはいけないという雰囲気があったらしい──、彼の知見が現場で活用されることを妨げたともしている。
このほか、ウェイプルズの上司にあたるルイス・ウィルソン、英国からシカゴ大学にきたジェームズ・ウェラード、価値論要求論の概念化で知られるレオン・カーノフスキーなど、シカゴ学派に属する人物の関連業績について詳しくも紹介されている。また、bibliopsychologyなる学問を提唱したロシア人ニコラス・ルバキン、要求論の理論家として知られる英国人マッコルヴィンについてもそこそこの言及がある。
以上。図書館情報学史に興味ある人向けかな。読書研究のレビューだと思って読むと、それぞれの研究の調査結果についてはあまり詳しい説明が無かったりして、肩透かしを食らう。
米国における20世紀前半の読書研究史。図書館情報学の領域にも「シカゴ学派」なるものがあってかつて影響力を持っていたのだが、その勃興史でもある。著者はユダヤ系らしく、イスラエルに関する著書も二冊書いている。個人的な事情を記すと、大学院に進学した25年ほど前に古本で購入したが、一行も読まないまま積読になっていた。今年サバティカルを得たおかげでようやく読了できた。
20世紀前半の中でも、特に1930年代のダグラス・ウェイプルズの業績に焦点が当てられている。もともと彼は教育学者だったが、シカゴ大に図書館学の大学院ができるとそこに移動し、読書研究を開始する。図書館員による読書研究は1920年代にも存在していたが、統計学的に未熟で、また読者や読書対象を分類するカテゴリも十分検討されたものではなかったらしい。そうした難点を克服した成果がウェイプルズの研究だった。彼はよく計画された調査と洗練された統計によって、読者の属性別の読書傾向について明らかにした。彼によって図書館学は科学となり、社会学のメディア研究と成果が共有されることになったと評価される。ただし、統計の導入は現場の図書館員の反発を招き──数字で読者を判断してはいけないという雰囲気があったらしい──、彼の知見が現場で活用されることを妨げたともしている。
このほか、ウェイプルズの上司にあたるルイス・ウィルソン、英国からシカゴ大学にきたジェームズ・ウェラード、価値論要求論の概念化で知られるレオン・カーノフスキーなど、シカゴ学派に属する人物の関連業績について詳しくも紹介されている。また、bibliopsychologyなる学問を提唱したロシア人ニコラス・ルバキン、要求論の理論家として知られる英国人マッコルヴィンについてもそこそこの言及がある。
以上。図書館情報学史に興味ある人向けかな。読書研究のレビューだと思って読むと、それぞれの研究の調査結果についてはあまり詳しい説明が無かったりして、肩透かしを食らう。