The Smiths "The Smiths" Rough Trade, 1984.
ロック。5年前にベスト盤についてコメントした(参考)が、このバンドのボーカリストだったMorrisseyの新作の秀逸なタイトル"World Peace is None of Your Business"(Harvest, 2014)を見て、思い出して久々聴いてみた。本作は以降の全盛期の名作群ほど完成度が高くない。だが、貧乏無職の非モテ引き込もり青年の自虐ソングというこれまでに存在しなかったコンセプトを大衆音楽の世界に導入し、そして(英国内だけとはいえ)それなりのセールスを上げたという記念すべきデビュー作である。
サウンドは、しつこいギターのアルペジオを中心とするあまり展開の少ないバンド演奏の上に、憂いを含んだゆったりとした男性ボーカルがのるといもの。当時からバーズ(The Byrds)が引き合いに出されてきたが、似ているのはギターサウンドだけで、全体を貫く憂鬱な感覚は1980年代前半の英国ニューウェーブのそのものである。この作品に限っては、スローでまどろむような優しい曲が多く収録されており、同時期にデビューしたEverything But the Girlに通じるおしゃれなカフェBGM路線の可能性があったことをうかがわせる。しかしその後はもっと自虐の度を高めて攻撃的になるのだが。
自虐ソングがウリとはいえ、この作品の収録曲の歌詞は見慣れない英単語ともったいぶった言い回しがあって、ややとっつきにくいかもしれない。同年の編集盤"Hatful of Hollow"以降の作品の方が、詞の語り手のキモくて情けない姿がわかりやすい。とはいえ、フォークシンガーのように社会にプロテストするわけでもなく、またロックらしく駄目さをカッコ良さに反転させてみせるわけでもなく、自分の救いようのなさをそのまま提示してみせるというリアリズムはすでに健在である。中二病のこじらせ方としては洗練されている、と当時(初めて聴いたのは86年頃)中坊だった僕はひどく感動したものだ。
なおtrack 6の'This Charming Man'はオリジナルのRough Trade盤にはもともと未収録だったが、米国Sire盤以降、再発wea盤、再発Rhino盤と必ず付されるようになった。貧乏な美少年が自転車がパンクして困っていたところに、かっこいい車に乗った紳士がやってきてナンパされるという情景を描写した、彼らの代表曲である。もう30年になるのか。
ロック。5年前にベスト盤についてコメントした(参考)が、このバンドのボーカリストだったMorrisseyの新作の秀逸なタイトル"World Peace is None of Your Business"(Harvest, 2014)を見て、思い出して久々聴いてみた。本作は以降の全盛期の名作群ほど完成度が高くない。だが、貧乏無職の非モテ引き込もり青年の自虐ソングというこれまでに存在しなかったコンセプトを大衆音楽の世界に導入し、そして(英国内だけとはいえ)それなりのセールスを上げたという記念すべきデビュー作である。
サウンドは、しつこいギターのアルペジオを中心とするあまり展開の少ないバンド演奏の上に、憂いを含んだゆったりとした男性ボーカルがのるといもの。当時からバーズ(The Byrds)が引き合いに出されてきたが、似ているのはギターサウンドだけで、全体を貫く憂鬱な感覚は1980年代前半の英国ニューウェーブのそのものである。この作品に限っては、スローでまどろむような優しい曲が多く収録されており、同時期にデビューしたEverything But the Girlに通じるおしゃれなカフェBGM路線の可能性があったことをうかがわせる。しかしその後はもっと自虐の度を高めて攻撃的になるのだが。
自虐ソングがウリとはいえ、この作品の収録曲の歌詞は見慣れない英単語ともったいぶった言い回しがあって、ややとっつきにくいかもしれない。同年の編集盤"Hatful of Hollow"以降の作品の方が、詞の語り手のキモくて情けない姿がわかりやすい。とはいえ、フォークシンガーのように社会にプロテストするわけでもなく、またロックらしく駄目さをカッコ良さに反転させてみせるわけでもなく、自分の救いようのなさをそのまま提示してみせるというリアリズムはすでに健在である。中二病のこじらせ方としては洗練されている、と当時(初めて聴いたのは86年頃)中坊だった僕はひどく感動したものだ。
なおtrack 6の'This Charming Man'はオリジナルのRough Trade盤にはもともと未収録だったが、米国Sire盤以降、再発wea盤、再発Rhino盤と必ず付されるようになった。貧乏な美少年が自転車がパンクして困っていたところに、かっこいい車に乗った紳士がやってきてナンパされるという情景を描写した、彼らの代表曲である。もう30年になるのか。