太田邦史『エピゲノムと生命:DNAだけでない「遺伝」のしくみ』ブルーバックス, 講談社, 2014.
仲野徹『エピジェネティクス:新しい生命像をえがく』岩波新書, 岩波書店, 2016.
分子生物学。二書ともエピジェネティクスの入門書で、同一のDNAでありながらなぜ違った表現型となるのか、その仕組みについて説明している。簡単にまとめれば、環境の影響で遺伝子が活性化したりしなかったりするという話だが、どちらも生化学の専門用語満載で、遺伝子制御の方法も複数あってわかりやすいとは言えない。
二書のうち太田本のほうが分子生物学的な説明が充実しており、ジャンクだと思われていたDNAが実は機能していたということから、タンパク質の詳しい分子式など、仕組みについてはくわしい(けれども読むのがしんどい)。一方、仲野本は実際のエピジェネティクス現象やその意義などをわかりやすく説明しており、この点では読み進めやすい(それでも生化学的な説明はかなりの量を占める)。後者は、エピジェネティクスに関してよく言われる「獲得形質が遺伝する」という話について、遺伝において一般的な現象ではないだろうし、また十分にメカニズムが解明されているわけではない、とも述べる。
以上のようにまだわからないことが多いこの分野の、現時点での報告というところだろうか。生化学的な仕組みにそれほど関心がないならば、リドレーの『やわらかな遺伝子』を読めば十分であり、その先の内容という印象である。
仲野徹『エピジェネティクス:新しい生命像をえがく』岩波新書, 岩波書店, 2016.
分子生物学。二書ともエピジェネティクスの入門書で、同一のDNAでありながらなぜ違った表現型となるのか、その仕組みについて説明している。簡単にまとめれば、環境の影響で遺伝子が活性化したりしなかったりするという話だが、どちらも生化学の専門用語満載で、遺伝子制御の方法も複数あってわかりやすいとは言えない。
二書のうち太田本のほうが分子生物学的な説明が充実しており、ジャンクだと思われていたDNAが実は機能していたということから、タンパク質の詳しい分子式など、仕組みについてはくわしい(けれども読むのがしんどい)。一方、仲野本は実際のエピジェネティクス現象やその意義などをわかりやすく説明しており、この点では読み進めやすい(それでも生化学的な説明はかなりの量を占める)。後者は、エピジェネティクスに関してよく言われる「獲得形質が遺伝する」という話について、遺伝において一般的な現象ではないだろうし、また十分にメカニズムが解明されているわけではない、とも述べる。
以上のようにまだわからないことが多いこの分野の、現時点での報告というところだろうか。生化学的な仕組みにそれほど関心がないならば、リドレーの『やわらかな遺伝子』を読めば十分であり、その先の内容という印象である。