ウィル・ストー 『ステータス・ゲームの心理学:なぜ人は他者より優位に立ちたいのか 』風早さとみ訳, 原書房, 2022.
人間は皆ステイタス獲得競争を戦っていると主張する一般向けの書籍。著者は英国の科学ジャーナリストで、邦訳はこれが初めてである。原書はThe status game: on social psition and how we use it(William Collins, 2021.)となる。
400頁ほどの長さなのにプロローグと29章という章構成となっており、一つ一つの章は短い。始めの方の章は「他者より良いステイタス」のメリットについてで、「繁殖機会」というありがちな進化心理学的な回答だけでなく、「寿命」という答えも添えてくる。他の条件が同じならば、ステイタスが高い人の方が低い人より長生きとなるらしい。しかし、ステイタスは相対的なものであり、平等に分配することはできない。獲得できるのは一握りの人たちだけである。このため、ステイタスを上昇させても「上には上」がいて、なかなか満足に到達しないという。
というような話を、ステイタス競争を例示する歴史的エピソードを交えながら展開している。少々脱線気味の話もあってきれいにまとまっているという印象はない。けれども、骨子部分よりはエピソードのほうが楽しめる。特に、宗教の機能は「現世の秩序とは異なったゲームを提供すること」だとしているが、なるほどと感じた。
人間は皆ステイタス獲得競争を戦っていると主張する一般向けの書籍。著者は英国の科学ジャーナリストで、邦訳はこれが初めてである。原書はThe status game: on social psition and how we use it(William Collins, 2021.)となる。
400頁ほどの長さなのにプロローグと29章という章構成となっており、一つ一つの章は短い。始めの方の章は「他者より良いステイタス」のメリットについてで、「繁殖機会」というありがちな進化心理学的な回答だけでなく、「寿命」という答えも添えてくる。他の条件が同じならば、ステイタスが高い人の方が低い人より長生きとなるらしい。しかし、ステイタスは相対的なものであり、平等に分配することはできない。獲得できるのは一握りの人たちだけである。このため、ステイタスを上昇させても「上には上」がいて、なかなか満足に到達しないという。
というような話を、ステイタス競争を例示する歴史的エピソードを交えながら展開している。少々脱線気味の話もあってきれいにまとまっているという印象はない。けれども、骨子部分よりはエピソードのほうが楽しめる。特に、宗教の機能は「現世の秩序とは異なったゲームを提供すること」だとしているが、なるほどと感じた。