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1970年代半ばから2000年代半ばまでの米国ビデオレンタル店の栄枯盛衰史

2024-08-11 20:33:39 | 読書ノート
Joshua M. Greenberg From Betamax to Blockbuster : Video Stores and the Invention of Movies on Video MIT Press, 2008.

  米国におけるビデオ文化の興隆と衰退の社会史。特にビデオレンタルに焦点を当ている。著者はニューヨーク公共図書館所属で、現在もいろいろプロジェクトを動かしているらしい。本書ではビデオ再生機のことをVCR = Video Cassette Recorderと記している。ざっと調べた限りでは、あちらでもVTR = Video Tape Recorderが使われることのほうが多いようだが、VTRはオープンリール形式対応の機器も含むので少々範囲が広いみたいである。なお実際に読んだのは2010年のPaperback版で、ハードカバー版より少々ページが多い。

  1970年代半ばにソニーがBetamaxの家庭用再生録画機器を米国で発売したとき、テレビ番組の予約録画するという使用が想定されていた。まずマニア(20代から30代の独身男性)がこれに飛びつき、ミニコミを通じて自前で録画したカセットの交換を行った。続いて、ビデオに商機を見出した企業家が映画会社と交渉して、映画を事前に収録したビデオの販売およびレンタルの卸売業者となってゆく。ビデオには伝統がなく、参入障壁も低いため、さまざまな前歴を持つ人物が各地でレンタル店を開くようになる。一部の店舗はシネフィルを店員として雇い(そうした店員の代表がタランティーノ)、ビデオレンタル店が映画館に代わってレイ・オルデンバーグのいう「第三の場」となっていったという。しかし、より品揃えやレンタル体験を均一化(マクドナルド化)しようとした後発の大手チェーン店ブロックバスターが、そうした独立系レンタル店を駆逐していった。

  「第三の場」的なレンタル店は、ネットの普及以前に、大手チェーンによって劣勢に追い込まれたという歴史観が開陳されている。このほかベータvs.VHS闘争、著作権問題、レンタル店の団体形成、録画予約の操作ができない米国人がけっこういた、などなどについて語られている。エピローグでは、Neflixも登場するが本書ではまだDVDの郵送レンタル会社として紹介されている。始めのほうではソニーや松下(Matsuhitaという変な表記になっている)が出てくるので日本人読者も楽しめるかもしれない。あと、出てくる映画タイトルもそれほどマニアックではない。日本でも同時代にビデオレンタル店の栄光盛衰があったわけで、比較のためにも邦訳があってもいいと思う。
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