笹沢豊『〈権利〉の選択』(ちくま学芸文庫), 筑摩書房, 2021.
政治哲学。「権利」概念を、明治期の日本における輸入と解釈と、1970s-80sの英米系の政治哲学者を参照しながら掘り下げてゆくという内容。著者は筑波大学名誉教授で、オリジナルは1993年の勁草書房刊である。この文庫本には哲学者の永井均の解説が付ついている。
権利概念はどのような根拠で正当化できるのか、というのがその問い。冒頭から物理的な力によって支えられなければ存在しえないのではないか、と疑われる。その地点から、福沢諭吉や加藤弘之、ロールズやドウォーキン、センほか古今東西の思想家の議論が検討され、整理されてゆく。結局、権力関係の外部で権利を正当化しようにも、その論拠は「Aが成り立つにはBが必要。ならばB自体はどう正当化できるか。それは背後にCがあるからだ」というように無限後退していってしまうという。では論拠不十分の嫌疑があるため権利概念を捨てるべきなのか。著者は否、と議論を展開させる。
やや難だが面白く読める内容である。ただし最後で否とする理由についてははっきり述べられておらずそこは不満が残った。まあ、結論ではなく論理展開を味わうべき本なので、そこを高く評価すべきなのだろう。
政治哲学。「権利」概念を、明治期の日本における輸入と解釈と、1970s-80sの英米系の政治哲学者を参照しながら掘り下げてゆくという内容。著者は筑波大学名誉教授で、オリジナルは1993年の勁草書房刊である。この文庫本には哲学者の永井均の解説が付ついている。
権利概念はどのような根拠で正当化できるのか、というのがその問い。冒頭から物理的な力によって支えられなければ存在しえないのではないか、と疑われる。その地点から、福沢諭吉や加藤弘之、ロールズやドウォーキン、センほか古今東西の思想家の議論が検討され、整理されてゆく。結局、権力関係の外部で権利を正当化しようにも、その論拠は「Aが成り立つにはBが必要。ならばB自体はどう正当化できるか。それは背後にCがあるからだ」というように無限後退していってしまうという。では論拠不十分の嫌疑があるため権利概念を捨てるべきなのか。著者は否、と議論を展開させる。
やや難だが面白く読める内容である。ただし最後で否とする理由についてははっきり述べられておらずそこは不満が残った。まあ、結論ではなく論理展開を味わうべき本なので、そこを高く評価すべきなのだろう。