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オープンアクセスの効果と費用をめぐる実証研究

2024-08-06 10:28:47 | 読書ノート
浅井澄子『オープンアクセスジャーナルの実証分析』日本評論社, 2023.

  オープンアクセス(OA)化された学術雑誌の効果と費用について探った専門書籍である。著者は明治大学経済学部の教授で、このブログでは前著の『書籍市場の経済分析』を取り上げたことがある。

  OA化は論文を投稿する側に「論文処理料」という費用負担をもたらした。1章では、OA化という理想が、既存の雑誌をハイブリッド誌からOA誌へと転換させるトレンドを生み出したが、その渦中でRead&Publishという購読料と論文処理料のバンドル契約をもたらし(出版社と大学間の契約)、これが出版社間の競争を阻害して大手出版社を有利にする可能性があると論じている。

  以降の章では以下のような疑問を扱っている。2章では、OA誌掲載論文はそうでない論文より被引用数が高くなるか?──答えはジャーナル側の編集戦略次第だという。3章では、Elsevierほか大手学術出版社が短期間に多数のOA誌を保有することを目指した理由は何か?──委託するジャーナル側にも事情があるとのこと。4章では、購読料と論文処理料の決定要因は何か?──高い被引用指標と、ハイブリッド誌に限れば大手出版社の独占力が影響しているという。

  5章では、著者が投稿先を選択するうえで論文処理料の価格は影響するか?──影響しないとのこと。6章では、OA誌に掲載される著者が属している国の分布が調べられ、ハイブリッド誌の分布と比べると低所得国の著者が多くなっているという。7章では、ハイブリッド誌におけるOA論文とそうでない論文のアクセスパターンの分析で、OA論文のほうがアクセス数が多くなるけれども減衰の時間的パターンはそうでない論文と変わらないとしている。

  以上。先行研究にも詳しく手堅い内容である。今後は、高騰する雑誌購読料または論文処理料を抑えるための議論をするならば本書を踏まえるべきということになるだろう。もちろん、本書でも最後の章でその議論がある。
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