山重慎二『家族と社会の経済分析:日本社会の変容と政策的対応』東京大学出版会, 2013.
国家と個人の間にある中間共同体──家族・血縁・地域共同体──と、政府の福祉との間にある関係を分析した書籍。数学モデルを通じた分析が主となっており、専門家向けである。
本書によれば、国家による福祉の提供は、生活苦に陥ったメンバーを救済するという中間共同体の働きをクラウディング・アウトしてきたという。しかし、いったんそうした働きを止めてしまった共同体は政府が福祉の領域を退いても再生しない。というわけで、国による政策的対応を求める。その求めるところは、保育サービスの拡充や育児休業支援、高齢者の労働参加支援、社会保険の税方式への移行などである。そのひとつひとつを見るとあまり目新しいものではないが、理論モデルとともにトータルな政策パッケージとして提案されているところが重要なのだろう。
政府の財政危機的的な状況は十分踏まえられた上での議論ではあるが、提案されている方向は負担を大幅に減少させるようなものではない。どちらかと言えば、力強く読者を納得させるのではなく、しぶしぶ認めさせるような感じである。その意味で、日本の未来に希望を抱かせるようなものではない。
国家と個人の間にある中間共同体──家族・血縁・地域共同体──と、政府の福祉との間にある関係を分析した書籍。数学モデルを通じた分析が主となっており、専門家向けである。
本書によれば、国家による福祉の提供は、生活苦に陥ったメンバーを救済するという中間共同体の働きをクラウディング・アウトしてきたという。しかし、いったんそうした働きを止めてしまった共同体は政府が福祉の領域を退いても再生しない。というわけで、国による政策的対応を求める。その求めるところは、保育サービスの拡充や育児休業支援、高齢者の労働参加支援、社会保険の税方式への移行などである。そのひとつひとつを見るとあまり目新しいものではないが、理論モデルとともにトータルな政策パッケージとして提案されているところが重要なのだろう。
政府の財政危機的的な状況は十分踏まえられた上での議論ではあるが、提案されている方向は負担を大幅に減少させるようなものではない。どちらかと言えば、力強く読者を納得させるのではなく、しぶしぶ認めさせるような感じである。その意味で、日本の未来に希望を抱かせるようなものではない。