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マンガ単行本はなぜ見かけが書籍なのに流通上は雑誌扱いなのか

2024-08-12 10:26:26 | 読書ノート
山森宙史『「コミックス」のメディア史:モノとしての戦後マンガとその行方』青弓社, 2019.

  マンガの発行形態と流通の歴史。「コミックス」いわゆる雑誌に連載されたマンガを収録した新書判(またはB6判)という発行形態が、いつどのように誕生して、またそれが出版や書店をどう変化させていったかという歴史を描いている。元は関西学院大学に提出された博士論文である。出版時の著者の所属は四国学院大学だが、現在は共立女子大学のようだ。

  マンガ単行本は戦前から存在したが、現在のように雑誌連載に従属したものではなく、書籍であった。1960年代初めに4コマのサラリーマン漫画が新書判で発行されるようになり、さらに1960年代半ばには新書判がストーリーマンガを収録する判型となった。60年代終わりには特定雑誌と結びついてシリーズ化され、流通上では「雑誌扱い」となる。これが現状のコミックスとなった。その際、少年誌掲載マンガは新書判に、青年誌掲載マンガはB6判へと棲み分けられたという。

  コミックスは小売書店ですぐさま受け入れられたわけではなく、1970年代までは書店における棚の数は限られたものだったらしい。地方書店では入手困難なこともしばしばだった。この状況は70年代後半から80年代にかけて改善される。小売書店主にマンガの商品性が高く評価されて(すなわちよく売れたということ)徐々に売り場面積を増やしていった。このほか、ブックオフの台頭によって形成された二次流通市場や、電子媒体によるマンガ流通についても言及がある。

  以上。コミックスの「書籍なのに雑誌扱い」という奇妙な位置づけを掘り下げた内容であり、これまで無かった視角からの分析で非常に啓発的だった。ただし、序章と終章は必要以上に難解になっている気がする。
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