金秀・かりゆしグループが立ち上がった気持ちは理解できるが

かりゆしグループが立ち上がった気持ちは理解できるが

 経済会の翁長市長を応援する同志会の代表者であるかりゆしグループの平良朝敬共同代表は記者会見を開き声明を発表した。

 昨年の一月の「オスプレイ配備の撤回、普天間基地の閉鎖と県内移設断念」を求めて、県内全四十一市町村長らが安倍晋三総理大臣に提出した「建白書」をいまなお実現しようという翁長市長を応援することを平良共同代表は発表した。
 那覇市議会では共産党の会派団長の古堅茂治氏と幹事長の我如古一郎氏が、社民党は会派副会長の多和田栄子氏が社大党は会派会長の平良識子氏がそれぞれ出馬の意向を代表質問でただし、「県民の心をまとめ上げられるのは市長しかいない」と翁長市長出馬を促した。

 経済界と共産党・社民党が同じ人物を支持するのに奇妙な感じがする。それが翁長市長の魅力ということなのだろうか。
 翁長市長は、古堅氏の一般質問に対し、
「これまで保守が革新に対し、革新が保守に対し、お互い自分が足りない役割を果たしてきた。県民がそのことへの敬意を持ち合わせていないと、二十一世紀の沖縄はなかなか難しい」
と、保革が互いに歩み寄ることの重要性を強調した。

 翁長市長はオスプレイ配備反対、辺野古移設反対、普天間飛行場の県外移設を主張した。オスプレイ配備反対、辺野古移設反対は革新と同じであり、翁長市長は大きく革新の主張に傾いた。では革新は保守の何に傾いただろうか。
 なにも傾いていない。翁長市長系の保守が革新の主張するオスプレイ配備反対と辺野古移設反対を受け入れただけである。翁長市長は保守に足りないものをオスプレイ配備反対と辺野古移設反対だというのだろうか。
 それは足りる足りないの問題ではない。沖縄に米軍基地が集中している云々の問題でもない。アジアの民主主義国家の平和を守るか否かの問題である。
 金秀グループの呉屋氏は沖縄の米軍基地に抑止力がないという認識である。戦後七十年間戦争に巻き込まれなかったことに米軍は関係がないと思っているようだが、大きな間違いである。

 ところで、「オール沖縄」で東京行動をやった時の翁長市長は普天間飛行場の県外移設を主張し続けた。前の知事選の時にも、県外移設を公約にしたのは翁長市長であった。翁長市長が信念を曲げることのない、ぶれない政治家であるなら県外移設を主張するはずだが、最近の翁長市長は県外移設をまるっきり言わなくなった。

 一方、翁長市長を応援する同志会の声明では「普天間基地の閉鎖と県内移設断念」を発表している。県外移設ではなく閉鎖である。
 翁長市長は「県外移設」を捨て、建白書に書いてある「閉鎖・撤去」を主張するのだろうか。それなら共産党や社民党と同じ主張になる。共産党・社民党は安保廃棄を掲げ、米軍が日本に駐留するのを認めない。普天間飛行場も県外移設ではなく「閉鎖・撤去」を主張している。
県外移設を主張しなくなった翁長市長に、閉鎖を主張する同志会を重ねると翁長市長は「閉鎖・撤去」を主張していることになる。それなら保守の看板を捨てて革新の道を歩くことになる。

そうなると問題は「閉鎖・撤去」が実現できるかである。呉屋氏は簡単に「閉鎖」をできると思っているが、それは無理である。「閉鎖」=固定化であることは自明の理である。
革新は「閉鎖・撤去」を長年主張し続けたが、実現のめどは一度もなかった。民主党が政権を握った時に、できるなら国外、最低でも県外移設を鳩山元首相は公言し、社民党は必死に国外移設場所を探したが、米本国やグアムを視察した後に断念した。国外移設は不可能であることを民主党も社民党も認めたのである。あの時に「国外撤去」は非常に困難であることが明らかになった。「閉鎖」となると「国外移設」より困難である。

そのことを知らない金秀グループの呉屋氏や平良氏は「建白書」に「閉鎖め撤去」を書いてあるので声明文に「閉鎖」を書き、普天間飛行場の「閉鎖」を主張した。
「閉鎖」は革新がずっと主張してきたが、日米政府は中国が社会主事国家である限り普天間飛行場を閉鎖することはない。その主張は実現不可能であるから普天間飛行場を固定化することと同じである。
そのことを翁長市長は知っている。だから、県外移設を主張してきたのである。

しかし、翁長市長が主張し続けた「県外移設」の文言は「建白書」にはない。「閉鎖・撤去」の文言があるだけである。
革新側は翁長市長は保守の立場から「県外移設」を主張し続け、安保廃棄につながる「閉鎖・撤去」は公言できないことを知っている。
だから、翁長市長と共通するのは「辺野古移設反対」であるから「辺野古移設反対」だけを公約にして、翁長市長を支持することにしたのである。

翁長市長が保守を自認するなら、安保廃棄を主張している共産党や社民党が主張し続けている「閉鎖・撤去」を公約にすることはできない。
一方、革新は米軍の国内駐留を認める「県外移設」を公約にすることはできない。「県外移設」を公約にすることは日米安保を認めることになる。

 翁長市長と革新はお互いの立場を理解しているから、翁長市長は「県外移設」を、革新は「閉鎖・撤去」を口にすることを封印している。そして、辺野古移設反対を主張している。
 政治家同士の暗黙の了解を知らない金秀、かりゆしクループの代表は「建白書」に書いてあるのを鵜呑みにして「普天間飛行場の閉鎖」を声明文に入れたのである。

 ただ、金秀、かりゆしグループの気持ちも理解できる。

 昨年以来、県選出国会議員をはじめ、次々と公約をほごにせざるを得ない立場に追い込まれていく政治家の姿には、これまでの過去の歴史を見るようで、県民の一人として誠に慚愧に絶えない。
   「オナガ雄志知事を実現する同志会」声明文

 沖縄自民党の体たらくぶりを見せられた金秀・かりゆしグループが憤怒し立ち上がったのは理解できる。
 辺野古移設に反対し県外移設を主張していた国会議員が自民党本部の一喝で辺野古移設に賛成し、仲井真知事も「県外移設のほうが早い」と言いながら、土壇場で辺野古移設を容認した。一八〇度方針を変えながら県民への謝罪は一切ない。
 そんな沖縄自民党に怒るのは当然である。怒らない経済人のほうが沖縄自民党と同じで理念がなく目先の利益に心を奪われ、沖縄の将来を全然考えていない。

 沖縄自民党の体たらくに怒り、立ち上がった金秀・かりゆしグループのほうが沖縄のことを真剣に考えていると私は思う。

 ただ、彼らの決定的な欠点は革新の理論を鵜呑みにしていることだ。建白書は保守ではなく革新がつくったものである。だから、「県外移設」ではなく「閉鎖・撤去」の文言が書いてある。建白書通りの政治をやれば革新政治を実行することになる。

 呉屋氏は、
「那覇市新都心のように新しい産業を構築していくというのが望ましい」
と述べているが、那覇新都心は新しい産業ではない。高層マンションやサービス業が集積しただけの街である。
 革新の主導によって県議会事務局が「米軍基地全面返還したら9153億5千万円の経済効果がある」と発表したが、その根拠にしたのが那覇新都心の経済であった。
 この理論は、米軍基地を撤去したほうが沖縄経済は発展するという政治目的のためにつくったでっち上げ理論であるが、沖縄二紙や左翼学者がこの理論が正しいように後押しをしたが、あろうことか自民党もこの理論に洗脳されている。
 驚いたことに経済人である金秀、かりゆしグループもこの理論に洗脳されている。
 沖縄の経済人までもがこんなに頭が悪いのに私は愕然としている。

 私は「沖縄に内なる民主主義はあるか」に「県議会事務局の米軍基地全面返還したら9155億5千万円経済効果真っ赤な嘘」を掲載したが、それは本当に真っ赤な嘘なのだ。

 那覇新都心は名古屋のトヨタ自動車製造工場のように物を生産する工場はない。物を売る店、飲食店、アパート・マンションが集まった街である。
 いわゆる人々が生活し買い物をする街である那覇新都心の人々は県外ではなく県内から引っ越した人たちがほとんどてある。だから、那覇新都心の人口が三万人増えたとしても県全体の人口が三万人増えたことにはならない。那覇新都心の人口が増えた分だけ他の地域の人口が減り、県全体の人口はプラスマイナスゼロである。
 経済も同じことが言える。那覇新都心に越して来た人が月に30万円を生活のために那覇新都心で使うということは、那覇新都心の経済は30万円増えるかもしれないが、その人が前に住んでいた地域の経済は30万円減ることになる。
 那覇新都心の売り上げが増えるということは他の地域が減るということであり県全体の経済は人口と同じようにプラスマイナスゼロである。

 沖縄県の経済を支えているのは那覇新都心のような消費経済ではない。
 私たちの身の回りにあるほとんどが県外から移入・輸入した商品である。買った分だけお金が県外に出ていく。もし、県外から県内にお金が入って来ないと県内のお金が枯渇して県外からの商品を買うことができなくなる。

 沖縄県の経済を支えているのは県内にお金を流入させるものである。

平成二〇年

移輸出  3043億0500万円
観光収入 4298億8200万円
基地関係総収入 3388億0600万円
米軍基地からの要素所得1397億4500万円
軍雇用者所得 520億3500万円
軍用地料 789億7500万円
米軍等への財・サービス提供 686億5100万円
交付金 2574億6100万円

平成二〇年にはこれだけのお金が沖縄県に入ってきた。約1兆300億円であるが、県外から流入した商品の額に近い。つまり入ってきたお金は私たちが買う商品になり再び県外に出ていくのだ。
移輸出、観光収入、基地関係総収入、交付金とIT関係やコールセンターなどの本土から収入のあるサービス業が県経済を支えている。
金秀ス-パーで売っている商品のほとんどが県外商品である。金秀スーパーは県外から入ってきたお金が県外に出ていく場所であり、県経済の発展に貢献しているのではなく、県経済の発展の恩恵を受けているのだ。
金秀スーパーだけでなく私たちの生活になくてはならない販売業は、皮肉なことに県経済を発展させているのではなく県経済の発展から恩恵を受けているのだ。

経済のイロハさえ知らないのが沖縄自民党であり経済人である。だから、簡単に「米軍基地全面返還したら9155億5千万円経済効果がある」という嘘の理論に騙されるのである。

基地経済は沖縄経済に大きく貢献している。基地経済からの自立は口で言うのは簡単だが、実現するのは非常に困難である。
那覇市新都心経済が県の経済発展に貢献していると信じるのは寓の骨頂である。

金秀・かりゆしグループの呉屋氏や平良氏が米軍の抑止力がないと思っているのはアジアの歴史や現状を知らないからである。

沖縄には革新が振りまいた嘘の理論が蔓延している。沖縄二紙、左翼学者、左翼文化人に対峙する民主主義政治家や学者や文化人は沖縄には皆無に等しい。

だから、金秀、かりゆしグループのように沖縄のために立ち上がった経済人が革新の嘘の理論を信じ、沖縄にマイナスになる行動を取るのである。

革新と理論で真っ向勝負できない理念のない沖縄自民党が沖縄の混乱を巻き起こしていると思わざるをえない。
県民は沖縄自民党を支持しているのではなく自民党本部・安倍政権を支持していると私は思っている。
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