沖縄エゴ主義


 軍事問題は一地方の問題ではなく、国全体の問題である。ましてや、アメリカ軍の問題となると国際問題でもある。沖縄のアメリカ軍事基地問題について主張するには中国、北朝鮮やアジア情勢のことを知らなければならないし、戦後のアジアの歴史も知る必要がある。

 アメリカ軍が沖縄に駐留している理由は中国と北朝鮮への軍事圧力による抑止である。アメリカ軍は日本だけではなく、台湾、フィリピン、ベトナムへの中国の軍事介入をも防ごうとしている。
 比嘉康文氏が沖縄のアメリカ軍基地問題に意見を述べるのなら、アメリカ軍の沖縄駐留の目的に対しての認識をも述べるべきだ。日本政府やアメリカ政府にだけ目を向けただけではアメリカ軍の沖縄駐留についての客観的な意見を述べることはできない。

 比嘉康文氏は「人口が全国民のわずか1%の沖縄であり、沖縄戦と同じく国防の最前線になってもそれほど大きな犠牲にはならないとという意識がうかがえる」と述べているが勘違いもはなはだしい。
 戦後66年間で沖縄が戦争に巻き込まれる可能性が一度でもあっただろうか。戦後アメリカ軍が関わった戦争は挑戦戦争とベトナム戦争である。二つの戦争とも、社会主義国家である北朝鮮や北ベトナムが二つに分かれた国土を社会主義国家に統一しようとして南朝鮮や南ベトナムに侵略して始まった戦争であり、最前線は朝鮮やベトナムにあったのであり、北朝鮮や北ベトナムが沖縄を攻撃する可能性は全然なかった。中国などの社会主義国家が沖縄に侵攻する可能性はゼロだった。アメリカ軍が沖縄に駐留しているから沖縄戦のような犠牲が生じると予想するのアジア情勢を知らない人間のたわごとだ。

 中国は内モンゴルやチベットを人民解放軍の武力によって侵攻し支配している。むしろアメリカ軍が沖縄や日本に駐留していなかったら確実に中国は沖縄や日本に侵攻していた。

 比嘉康文氏はアメリカ軍が沖縄に駐留しているから沖縄が最前線だと思っているが、前線は朝鮮やベトナムであったのであり、沖縄は最前線へ兵士や物資を送る基地であった。沖縄が戦争の前線になることはあり得ないことだ。戦争は空想で語るべきではない。現実的に語るべきだ。
 
 北朝鮮に不穏な動きがある場合、すぐに嘉手納飛行場に最新鋭の情報収集する飛行機がやってくる。戦後すぐにつくられたトリイ通信基地はアジア最大の通信基地である。沖縄はアジア全体を監視し、中国や北朝鮮の軍事行動を抑止している軍事基地である。

 比嘉康文氏は、普天間飛行場の撤去は保革を問わず、全県民総意として決議されたから、民意をどう政治に反映させていくべきかを考えるべきであり、「民意を反映させた政治が民主主義の基本理念であると主張している。
 しかし、比嘉康文氏のいう民意は沖縄県だけの民意である。普天間飛行場問題は軍事問題であり国全体の問題だ。国家的な規模の軍事問題を県民の意思だけで決定していいものだろうか。もし県民が軍事問題について決定力があるというのなら、沖縄に関わる全ての軍事問題を沖縄県民が背負うことになる。たとえば、尖閣諸島の中国漁船問題があるが、ベトナムやフィリピンでは中国漁船のトラブルに中国の海軍が関わってきて、ベトナムやフィリピンの領海を侵略している。漁船に中国軍艦が発砲した事件も起きている。このような軍事問題を県民が対処しなければならないということになる。
 普天間基地の撤去は県民の意思を優先させて、尖閣列島の中国とのトラブルは国に任せるというのには矛盾している。

 普天間飛行場問題に民意を反映させるのが民主主義というのなら、沖縄県に関わる軍事問題は県民の民意で決めるということになるが、果たして県民が全ての軍事問題に責任ある意思決定ができるだろうか。県民は北朝鮮、中国だけではなく、アジアの国々の政治・軍事情勢を深く調査し、沖縄の軍事基地のあり方について決定しなければならない。それは無理な話だ。
 軍事問題は国全体に関係することであり、アジア、国際情勢とも密接な関係があるから国が中心になって対応するべきだ。
 
 政府は普天間基地を辺野古に移転しようとしているが、県や名護市は反対しているので移転できない。政府と地方の意見が一致した時に実現できるのが民主主義国家である。だから、現在のほうが民主主義国家のバランスが取れているのであり、県民の過半数の意思が政府の意思より上回るのは地方主義のエゴを優先することになり、民主主義国家のバランスは崩れる。

 「アメリカ議会の上院議員たちが来沖し、辺野古への移設が無理であると述べた」理由は名護市長や県知事などが移設に反対しているからであり、そのこと前原氏も承知している。

 比嘉康文氏は「やはり沖縄は日本政府よりもアメリカと話し合った方が得策のようだ」と述べているが、アメリカは普天間基地の移設先がない限り普天間基地は固定化すると決めている。アメリカには県外移設する気はない。もし日本政府が県外移設を望むのなら、アメリカが納得する場所を日本政府が見つけなければならない。「やはり沖縄は日本政府よりもアメリカと話し合った方が得策のようだ」と考えるのは楽観的すぎる。

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