民主党執行部は攻撃的になれ

己保身の「クーデター」政権中枢の6人組が唱える「菅降ろし」のばかばかしさ 「なぜ菅じゃダメか」すら満足に説明できない。
                 田原総一郎

 菅直人首相が退陣する条件として、2011年度2次補正予算案の成立と特例公債法案の成立、さらに再生可能エネルギー特別措置法案の成立の3つを挙げ、居直り姿勢を一段とはっきりさせた。

 自民党はじめ野党は、菅が自民党の浜田和幸参院議員を総務政務官に一本釣りしたことで対決姿勢を強めている。岡田克也幹事長ら「6人組」と呼ばれる党執行部と政権幹部も依然「菅降ろし」に執念を見せている。

 この菅降ろしはどうなるのだろうか。

 与野党に「菅辞めろ」の声は消えないし、国民のイライラも続くだろうが、それでも菅はしぶとく居残ってしまうのではないか。というのも、菅を辞めさせる制度的手段が手詰まりなうえ、そもそも鍵を握る民主党側に「菅降ろしの大義」が見えないからだ。

 倒閣を目指す野党はともかく、民主党の幹部たちが菅降ろしを叫ぶのは、そもそもつじつまが合わない。岡田や枝野幸男官房長官、仙谷由人官房副長官、玄葉光一郎政調会長兼国家戦略相、安住淳国体委員長らは「菅政権」そのものなのだ。

 彼らはそろって内閣不信任案に反対した。つまり菅を支持した。いったん忠誠を誓っておきながら、その直後に反旗を翻して、部下がボスに辞めろと迫っている構図である。

 彼らはいったい、どういう理由で菅を降ろしたいのか。そこを、はっきりさせてもらわなくてはならない。



 6人組は「菅首相では政策が前に進まない」と言うかもしれない。それは違う。

 民主、自民、公明の3党は2ヵ月も前の4月29日に「子ども手当や高速道路無料化、法人減税などの見直しを前提に、特例公債法案の成立に向け真摯に検討する」という内容の合意文書を交わしている。

 文書はお決まりの玉虫色に書いてあるが、簡単にいえば、野党が「ばらまき政策をやめれば特例公債法案の成立に協力しますよ」という話である。

 私は先日の「朝まで生テレビ! 」(テレビ朝日系列)で自民党の茂木敏充広報本部長にその点を確認した。すると茂木は「この3党合意は首相が菅だろうと、だれだろうと関係ない。政策の話だ。ばらまきを見直せば、私たちは法案に賛成する」と明言した。

 そうなら話は簡単だ。

 民主党は粛々と政策の見直しを進めればいい。そうすれば特例公債法案は成立する。政策の見直しが進まないとすれば、菅だけでなく政権幹部の6人組にも責任があるのは当然である。

 こういう政策合意の枠組みからは「菅辞めろ」という話は出てこない。


*** 「菅が辞めないならオレが辞める」はずじゃなかったのか ***
 次に、民主党内には「菅は代議士会ですでに退陣表明した。であれば、辞めるのは当然」という意見がある。ようするに「辞めると言ったのだから辞めろ」という話である。

 だが、こんな話が腑に落ちるか。

 国民が知りたいのは「菅政権のどこが悪いのか」という根本的な話である。本来なら「菅政権の政策が悪いから」とか「政策は良くても実行力がないから」といった理由があってしかるべきではないか。

 ところが、民主党議員たちに「菅のどこが悪いのか」という点を尋ねても、いっこうに要領を得ない。菅降ろしに迫力がないのは、それが根本的な理由である。

 もしも6人組が「菅政権の政策が悪いから」とか「菅に実行力がないから」辞めろというなら、悪い政策や実行力のなさは、繰り返すが、自分たちにも責任がある。



 そもそも6人組だって、中には「菅が辞めないならオレが辞める」と言っていた人もいたんじゃなかったか。であれば菅に辞任を求めて話が進まないなら、なにより自分たちがさっさと辞めればいい話である。

 ところが菅に辞めろと言いながら、自分たちの責任はほっかむりしようとしている。それどころか菅を引きずり降ろした後は、またもや自分たちが新しい首相を擁立しようとしているようだ。先に浮上した野田佳彦財務相の擁立話が典型である。

 これでは菅を辞めさせたところで、菅以外は同じ顔ぶれが政権を担うのだから、肝心の政策は何も変わらない。

*** 問題だらけの再生可能エネルギー法案 ***
 こうしてみると、民主党内の菅降ろしの本質は、側近たちによる権力簒奪=クーデターという以外の何ものでもない。少なくとも民主党に関する限り、いまの菅降ろしは国民生活に関係ない、単なる「党内権力ゲーム」に堕しているのである。

 言い換えると「菅の政策が悪いから」とか「実行力がないから」とかいう話は、6人組は口が裂けても言えない。それを言えば、たちどころに自分たちにも責任があることが明らかになり、ポスト菅の政権をつくる正統性が失われてしまうからなのだ。

 こう書くと、あたかも私は菅を支持しているように見えるかもしれない。

 まったく逆である。私は菅政権を支持していない。にもかかわらず「菅のどこが悪いのか」と繰り返し6人組や民主党議員に問うのは、菅政権の問題点をだれも正しく指摘していないと思えるからだ。

 たとえば、焦点になってきた再生可能エネルギー法案である。

 世間には「脱原発を唱え、再生可能エネルギー法案を成立させようとしている菅の姿勢は正しい。だから菅降ろしはよくない」という意見がある。

 菅の脱原発姿勢は本当だろうか。とてもそうは思えない。

 再生可能エネルギー法案は、電力会社に対して太陽光や風力などで発電した電力を買い取る義務を課している。ただし、電力会社は買い取りにかかった費用を回収するため家計や企業に上乗せ料金を課すことができる。電気料金が値上げになって、電力会社の腹は痛まない仕組みである。

 菅は「この法案が成立すれば、再生可能エネルギーの普及が進む」と宣伝している。しかし、そうはならない可能性が高い。なぜなら鍵を握る買い取り価格を国が決めてしまうからだ。



 本来であれば、電力会社の地域独占を廃し発電事業と送電事業を分離して、発電分野に新規参入を促す。A社、B社、C社が自由な価格設定で競争する。それによって技術革新を促すのが正しい方向である。

 携帯電話が普及したのも、かつては電電公社が独占していた通信事業を自由化したことが根本的な理由だった。

 菅政権は口では発送電の分離を唱えながら、原発賠償法案では東電存続を大前提にしている。政策の基本ベクトルがまったく正反対なのだ。この一事をもってして、菅政権の「脱原発・自然エネルギー推進」がいかにデタラメか明らかと言っていい。

 それでも菅は「脱原発」が国民受けするキャッチフレーズであると直感して、これから連発するだろう。国会で法案が通らなければ、それを理由に居残る。

 それでも6人組が辞めろと言い続けるなら、自分が党内の反動勢力に追い詰められた姿を演出して、解散・総選挙に打って出る作戦を描いているのではないか。小泉純一郎元首相の「郵政解散」のようなものだ。

 残念ながら、野党の側から再生可能エネルギー法案に対抗する案がまだ表舞台に登場していない。「民主党版菅降ろし」のばかばかしさをはっきりさせるためにも、なぜ菅政権ではだめなのか。いや正確に言おう、なぜ菅政権の政策ではだめなのか、延長国会の論戦に注目する。野党の力量が問われる局面だ。

現代ビジネス 7月1日(金)7時5分配信


田原総一郎氏の長文を掲載した。田原氏が指摘しているように、問題は菅首相だけではなく、民主党の執行部にも問題がある。政治空白とか言われているが、それは菅首相の責任というより民主党は執行部の能力のなさが原因している。
 自民党の浜田和幸参院議員を総務政務官に一本釣りしたことは、一本釣りされた自民党のほうがショックは大きいし、次は誰が引き抜かれるかと疑心暗鬼になる。ところが安住淳国体委員長は「頭を丸坊主にして謝りたい」と恐縮するだけで、自民党に積極的に仕掛ける根性がぜんぜんない。それでは与党の国体委員長なんて勤まらない。




破綻寸前の延長国会日程、立ち往生狙う自民

 国会空転の影響で、政府・与党が描いてきた延長国会の日程が「破綻寸前」(衆院事務局)となっている。自民党の戦術は「審議日程を遅らせれば、8月には民主党は立ち往生する」という“日程闘争”だ。 

 民主党執行部は当初、〈1〉延長国会冒頭から、原子力損害賠償支援機構法案、再生可能エネルギー特別措置法案の審議を始め、2011年度第2次補正予算案提出の7月15日までに衆院通過〈2〉2次補正予算案は1週間で成立〈3〉全法案をお盆前の8月12日までに成立――との青写真を描いていた。お盆明けに、首相退陣に伴う民主党代表選を行う環境を整えるためだ。

 だが、この構想は、浜田氏問題などへの野党の反発で「既に2週間の遅れが生じた」とされ、民主党国対は「エネルギー法案などは8月31日の会期末ぎりぎりまでかかりそうだ」との見方も出始めている。

 8月後半以降も政治日程は立て込んでいる。11年度第3次補正予算案の編成が本格化するのは8月後半~9月上旬とされる。9月前半には首相訪米も俎上(そじょう)にある。12年度予算案概算要求も9月末には決めなければならない。

読売新聞 7月1日(金)8時23分配信


自民党は大連立をもちかけて菅首相はずしによる民主党分裂の作戦から、「審議日程を遅らせれば、8月には民主党は立ち往生する」という予測から審議日程を遅らす戦術を取った。

 菅首相に大連立を邪魔されて不満たらたらな民主党の執行部は、菅首相の発言への批判や浜田議員を引き抜いたことへの不満をだらだらと続けている。これでは自民党の思いのままだ。
 もし大連立をしていたら、自民党は小沢グループの除外を強引に要求して民主党内の分裂をはかっていたはずだ。

 7月の“日程闘争”戦術に見られるように自民党の目的は民主党を潰して自民党が政権復帰するのが目的である。大連立を持ちかけたのも例外ではない。民主党の執行部はこのことを念頭におくべきだ。
 そうであるならば、菅首相の発言への反発や浜田議員の引き抜きにぶうぶう文句をいうのではなく、再生可能エネルギー特別措置法案、第2次補正予算案など菅首相が退陣する条件の法案を強引に成立させる努力をするべきだ。

 自民党が法案審議に乗ってこないのなら、自民党は大震災の被害者のことは考えないで政権奪取を優先させていると非難すればいい。自民党と仲良しこよしをして法案を成立させるという甘えた考えは捨てることだ。引き抜きしたことを謝るより、自民党が法案成立をいたずらに伸ばそうとすれば、もっと引き抜きをするかもしれないというような態度で自民党に圧力をかけるくらいでなければだめだ。

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