いかにも梅雨時らしい、不安定な天候が当地愛知にても続く。昨日途中辺りより天候は一旦回復、今日は晴れ間も覗いたが、風の強い一日だった。2015=平成27年6月も後僅か。早一年の折り返し点である。続く下半期もつつがなく日々を送れればとも愚考する次第であります。
先日、昨今の国際情勢を踏まえての、安全保障法制整備に関する与党国会議員による勉強会が開かれたが、その折、特に沖縄県の報道メディア向けと思われる、規制を志向する発言が複数あったのが問題視され、関係議員4名が処分されるに至った。民主党他多くの野党の批判の標的になっている様だ。昨日の地元紙C新聞に、この時の発言要旨が載ったので、以下引用しながら考えて参りたい。尚、同会の当日の講師は「永遠のゼロ」などの著作で知られる作家 百田尚樹(ひゃくた・なおき)さんである。
『沖縄2紙は左翼/マスコミの広告収入なくせ』
改憲を目指す自民党若手議員の勉強会「文化芸術懇話会」が6/25に同党本部て開いた初会合での報道機関に関する発言の趣旨は以下の通り。主宰する木原 稔衆院議員=党青年局長、講師の百田尚樹氏の冒頭発言はメディアに公開された。その後、百田氏の講演、出席議員による質疑が非公開で行われたが、発言者がマイクを使ったため、発言の多くは室外まで聞こえていた。
百田講師「マスコミの皆さんに言いたい。公正な報道は当たり前だが、日本の国をいかに良くするかという姿勢を持ってほしい。反日とか売国とか、日本を陥れるとしか思えない記事が多い。日本が立派な国になるかということを考えて記事を書いてほしい。
(ここから講演) 政治家は国民に対するアピールが下手だ。難しい法解釈は通じない。気持ちにいかに訴えるかが大事だ。集団的自衛権は一般国民には分からない。自国の兵力では立ち向かえないから、集団的自衛権は必要だ。侵略戦争はしないということで改憲すべきだ。攻められた場合は絶対に守ると言う事を書けばいい。」
(以下質疑) A議員「マスコミを懲らしめるためには、広告料収入をなくせばいい。われわれ政治家、まして安倍首相は言えないことだ。文化人、あるいは民間の方々がマスコミに広告料を払うなんてとんでもないと経済団体連合会(など)に働き掛けてほしい。」
B議員「広告料収入とTVの提供スポンサーにはならないということがマスコミには一番こたえるだろう。」
百田講師「本当に難しい。広告を止めると一般企業も困るところがある。僕は新聞の影響は本当はすごくないと思っている。それよりもTV。広告料ではなく、地上波の既得権をなくしてもらいたい。自由競争なしに50年も60年も続いている。自由競争にすれば、TV局の状況はかなり変わる。ここを総務省にしっかりやって欲しい。」
C議員「沖縄の特殊なメディア構造をつくってしまったのは、戦後保守の堕落だった。沖縄タイムス、琉球新報の牙城の中で、沖縄世論を正しい方向に持っていくために、どのようなことをするか。左翼勢力らに乗っ取られている現状において、何とか知恵をいただきたい。」
百田講師「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない。沖縄県人がどう目を覚ますか。あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば、目を覚ますはずだが、どうしようもない。(沖縄の基地負担問題は)根が深い。苦労も理解できる。」
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まあ「若手」と言っても、分別盛りの大人の発言とは到底思えない。百田さんと言う、物書きを生業とする言語のプロが居合わせた席だけに、尚更の感がするのも事実だろう。同会を主宰した自民青年局長は事実上更迭され、全員が厳重注意の由。安倍大臣も「大いに遺憾」とされたこの処分、俺も勿論まだ甘いとは思う。最低でも、一定期間の党員資格もしくは活動の停止位は踏み込んでも良かったのではないか。谷垣自民幹事長の仰る様に「報道を批判するに当っても、一定以上の品性を守る事が大変大事」なのである。本音トークだったのは分るが、百田講師を含め、問題の言及をした全員が、その品性を余り顧みていないのは事実だし、(結果としてそうならざるを得ないのだが)一部にせよ報道機関を潰すとか、広告料収入を干し上げるべく経団連に働き掛ける、などの下りは、それは言論封じの意図ありや?と取られても仕方がないわな。
百田さんのご発言「難しい法解釈は通じない。気持ちにいかに訴えるかが大事」の下りは、左傾メディアや左派勢力の側よりは「論理よりは感情が優先する連中」と一方的に取られかねないし、現に沖縄の市民運動組織間では「とんでもない発言」として激昂する動きもあるらしい。まあ、(左傾)社会民主党の有力地盤らしい過剰反応の印象もあるのだが、本土の与党人からすれば、先の大戦中唯一地上戦を経験した沖縄世論には、少し違和感があるのかも知れない。しかしながら安倍大臣以下、与党幹部もそうした沖縄の歴史的側面に最大限配慮すると、少なくとも表向きは言明している以上、その事を尊重しなかった今回の与党勉強会のあり様は大いに遺憾だし、このままでは日本国憲法改正の大志も果たせない。今後くれぐれも再発のない様強い対策が求められる事だろう。
その一方で、かねて報道倫理のあり様が指弾されるメディアの側にも「品性と倫理観」が厳しく求められると言う事だ。先週末、宮根誠司さんが司会の某TV番組中、1997=平成9年に神戸市で生じた、複数の小学生惨殺犯が被害者遺族の了解なしに出版した手記のあり様を巡って、某出演者が「言論表現の自由は残酷なもの。殺人被害者遺族の心情が汲まれなくても仕方がない」などと、(宮根さんが「ちとお待ちを」のフォローをされたにも関わらず)まるで屁糞の様な見解を恥かしげもなく晒し、見ていた俺は「お前が糞なんだよ! 」と大いに憤ったものだが、こんな所にも民間報道の品性のなさが露呈しており、とても「第四の権力」と言われる言論機関の担い手としての自覚などない。同時に、全部とは申さないが、報道メディアの連中には、売上欲しさに国会議員や地方議員の各位以上に、挑発に長けた芳しからぬ「名人」が多いのも事実である。
谷垣自民幹事長は過日「世の中には挑発上手な人物も多くいるので、言動にはそうした事も留意すべき」と言う意味の発言をされていたが、やはり一番の要注意は報道メディアだな、と改めて思う。巧妙にして性悪な出方は形こそ違え、特殊詐欺を働く不良集団や、諸々の悪徳商法を展開する、所謂ブラック企業と良い勝負。露骨な出方をする所が好売上などと言う場合も見られるのが、又々不愉快な所でもある。今回の与党議員勉強会の方々も、そうした所への不愉快さは理解できるが、やはり度を超えたレベルの表現は問題にせざるを得ない。(安易に挑発に乗って、鬱陶しい展開にしない為にも) 百田講師を含め、報道機関潰しとか、広告料収入干し上げなどと言ったダイレクトな言葉遣いは、くれぐれも再考して欲しい。
その事に留意するとしても今の、特に民間の報道人及び報道機関に、真に国益の為に命懸けで活動しようとする気概は見られない。繰り返すが「第四の権力」の担い手としての自覚がないと言う事だ。新聞もTVも、今のままではネット報道との視聴率競争に負け、衰退して行く事だろう。スポンサー確保以前の問題だ。百田さんのご言動も、それを憤ってのものだと言う意図は俺にも良く伝わって来たが、何としても媒体たる言葉の用い方が拙かった。これからも、文学の世界で応援したい方だけに、「失態」になってしまった今度のケースを、これからの糧にして頂きたい。
今回画像は、餓鬼の頃より大いに世話になっている名古屋鉄道の「今の顔」特急車 パノラマ・スーパーの近影。鉄道ファンには良く知られる、同鉄道本社も控える熱田神宮そばの、神宮前駅北詰で捉えました。往年の名車「パノラマカー」の実子と言われ、見晴しの良い眺望は、親分共々「巨視的に、公正に物事を見る事」を教えられた功労車であります。情報によると、今年から経年に見合った更新修繕リニューアルを受ける事が決まった由で、まだまだ元気にやってくれそうなのは喜ばしい事です。