Triority(トライオリティ)

四十にして惑う、それがトリニータ。

野村直輝が別格すぎて(8節いわき戦)

2023-04-09 22:06:05 | マッチレポート23'
大分トリニータとして初の対戦となったいわきFC。初対戦のさらにアウェイゲームとなれば万難排して駆けつけたいところだけど、今月だけはどうしても休みが取れずに魂は息子に預けて大人しく仕事をしていました。来シーズンこそはいわきのアウェイゲームに行ってみたいけど、現状を考えたら来シーズンはいわきと違うディヴィジョンであるようにシーズンを進めていかないとね。


いわきについては開幕節の藤枝戦と前節の岡山戦を観た。地域リーグの頃からフィジカル強化の部分がクローズアップされることが多く特殊なチームっぽく思われがちだけどやってるサッカーはいたってシンプルでよくあるタイプのサッカーなんだよね。いわきの特徴は高いプレスじゃなくて強いプレス。高い位置からやみくもに追いかけるのではなくてサイドに追い込んでから複数人で囲んで意図的にカオス状態を作り出す。で、こういう局面でのデュエルでは絶対負けないみたいなところがチームのフィロソフィーなんじゃないかなと思う。それ以外はいたって普通のチーム。この試合でうちが優位に進めることが出来たのはこのサイドでのカオス状態を作らせなかったことによると見ている。


前半は藤本vs嵯峨、茂vs辻岡の1対1の局面が多くあった。これはつまりいわきが作り出したいサイドのカオス状態を既に突破しているということ。これを可能にしたのはセンターボックスの4人(ノム、中川、将輝、野嶽)の賢いポジショニングにあると思う。第1プレッシャーラインであるいわきの2トップの間にポジショニングした将輝もしくは野嶽にスパスパと縦パスが入っていたけど、本来であればああいうパスは通されたくないから修正して閉めると思うんだけど、いわきはそこの修正はしなかった。ここからは想像でしかないけど、いわきはまだ自分たちのやり方を突き詰めている途中で相手の動き方に対する修正よりは自分たちのやり方の純度を高めることを優先させているんじゃないかなと思った。さらにノムや中川が相手ボランチの横や後ろで絶妙にボールを受けることが出来たので攻撃の回数は多かった。


この試合のノムは本当にすごかった。1G2Aという記録に残る活躍ももちろんなんだけど、相手の間で受ける、ターンしてディフェンスを引きつける、思わずうなってしまうようなラストパスを出すとちょっと別格だった。いわきFCもこのレベルの選手との対戦はちょっと驚きだったんじゃないだろうか。これまでもノムのすごいプレーは何度も見てきたけど、それでも今シーズンが過去最高だと思える。それくらいのキレっぷり。


大宮戦の記事でいわき戦はサイドチェンジがキープレーになると書いた。グッとボールサイドに寄せたいいわきに対して密集を抜けてスペースのある逆サイドへ展開することは定石とも言える。開幕戦の対戦相手だった藤枝はこれをうまく使ってあっという間に3点差まで広げていた。ただ今シーズンここまであまり長いサイドチェンジのパスを使ってきてなかったので少し不安だったけど、いわきに押し返され始めた後半に何度か出てたので安心したし、やはり効果的だった。14分ペレイラ→藤本、53分藤本→茂平、57分西川→茂平、83分奎汰(これは通らず)、85分司→宇津元あたりかな。


前節いわきと対戦した岡山は対いわき用に通常の4バックから3バックに切り替えていた。オーソドックスな4-4-2の立ち位置から球際勝負に持ち込みたいいわきに対してズレが作りやすい3-4-3は相性が良いというのは誰もが考えることなんでしょう。そういう意味では1年以上この布陣でやってきている我々にとっては相性の良い相手であったということは言えると思うのでこの結果に過信することは危険だと思う。また前半で途中交代した嵯峨理久こそサイドバックにいながらもこのチームのキープレーヤーなので申し訳ないが交代はラッキーだった。試合終盤でもエネルギッシュに最前線まで飛び出してきて、球際も巧みな嵯峨理久は本当に良い選手。おそらく多くのクラブが彼を既にピックアップしていると思う。


仙台大時代の嵯峨理久。


青森山田時代の嵯峨理久。マッチアップは市船の杉岡。かなりたくさんの育成年代の試合を観てきている自負があるんだけど、確か2016年のプレミアリーグのこの一戦は未だに結構印象に残る一戦として記憶している。世代別代表やJクラブ内定者がたくさんいるピッチの中で小さいながらもひと際まばゆい存在感を放っていたのが嵯峨理久だった。



2トップの一角で先発した谷村海那。彼も大学時代に印象的な試合があって、当時国士舘大の絶対的なエースだった明本(浦和)が早々に退場すると早稲田相手に劣勢の展開が長く試合も敗戦濃厚だった。大学時代はボランチだった谷村は終盤にセンターサークル付近からドリブルを開始して寄せてくる相手選手をルーレットターンで振り切るとそのままミドルでゴールを叩き込んだ。このスケール感のあふれるプレーが忘れられずその後も彼の動向を追っていて今回やっと対戦することとなった。まさかプロでセンターフォワードをやっているとは思わなかったけど、そのスケール感は本当に魅力。大学時代に物理的にだけじゃなく雰囲気的にも「デカいな」という印象を持ったのはこの谷村と伊藤敦樹(流経大→浦和)の2人かな。




マッチアップする早稲田の9番は武田太一(FC大阪)。


この試合のスタメンボード。住吉(水戸→広島)、明本(浦和)、谷村、高橋(熊本→浦和)とセンターラインの骨太っぷりが2部チームの陣容じゃないよね。



相手チームのことばかりで興味ない方は読み飛ばしちゃってください。育成年代の試合をたくさん観てるとこういうのが楽しいんですよ。自己満足なのでどんどん読み飛ばしてください。で、いわきで一番楽しみにしていたのがボランチの山下優人。大学サッカーを一番どっぶりと観ていた5年ほど前、#哲平さんに推薦したいシリーズ として気になった選手をツイートしている時期があってその時に取り上げた選手が4人。上夷克典(新卒じゃなかったけど実際に入団してくるんだからねホント信じられないよ)、中原輝(熊本→山形→セレッソ)、常本佳吾(鹿島)、そして山下優人の4人。この中で唯一新卒時にJクラブ入り出来なかったのが山下。でも当時まだ地域リーグだったいわきに入団してそこからコツコツと積み上げた。JFLのMVPを獲得してJリーグ昇格、昨シーズンはチーム唯一のフルタイム出場でJ3ベスト11にも輝いた。自分の目が間違いじゃなかったという思いとともに相変わらずの正確な左足は脅威だったなと。コツコツと積み上げたステップアップももうあと一段。山下には今後も頑張ってほしい。


ベンチメンバーの構成を見ても現在一番unchangeableな選手が茂平だろうけど、その茂平を75分で下げることが出来たのはここから始まる連戦において非常に大きかったんじゃないだろうか。2部リーグのフットボールカレンダーに余裕のある今シーズンは週中リーグ戦があるのが3試合。少ないとはいえここで勝ち点を積み上げられないとあっという間に順位を落とすことも考えられる。次節はスーペルゴラッソ小林成豪の大分帰還が楽しみな一戦。チーム力が均衡したJ2は気の休まるタイミングがない戦国リーグだよ、まったく。
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