アブソリュート・エゴ・レビュー

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A Good Day to Die Hard

2013-02-20 19:47:53 | 映画
『A Good Day to Die Hard』 John Moore監督   ☆☆★

 『ダイ・ハード』5作目をニュージャージーのいつもの映画館で観た。先週末封切りされたばかりだというのにガラ空きで、ゆったり特等席で観ることができた。ひょっとしてコケてるのか? という心配はどうやら当たらなかったようだが、それにしても、こりゃかなりダメなんじゃないかという出来だった。もちろんこれまでのシリーズは全作観ているし、どれもそれなりに愉しめたのだが、今回は明らかにクオリティが落ちている。今までのが娯楽作品としてA級だったとすれば、今回はB級だ。がっかり感は否めない。

 まず、「あれ、もう終わり?」というこのあっけなさ。実際に上映時間も1時間37分と短いが、ストーリーにあまり緩急がないので余計あっけなく感じる。見せ場の数も少なく、まだ中盤ぐらいだろうと思っていたら終わってしまった。

 緩急がないというのは、たとえば前作ではジョン・マクレーンが職務でハッカー青年を連行に行き、そこで傭兵たちにわけもわからず襲われ、ワシントンに行き、そこで国家的な規模のファイヤーセールだと判明し、という風に徐々に大きくなっていく流れがあったが、今回はモスクワの裁判所で突然爆発が起き、マクレーンはわけも分からないまま積極的にカーチェイスに参加する。しかもいきなりマックス・パワーの、モスクワの町中を破壊して回るようなカーチェイスで、そういう意味で瞬間的な迫力はすごいけれども、物語の流れというものがなくどうも唐突だ。今回は全篇そういう雰囲気があり、段取りとか下ごしらえなしに、とにかく物量作戦ですごい爆発や銃撃戦を見せる、というやり方のようだ。しかしこれでは、いくらすごいアクションを見せられても個人的には盛り上がれないのである。

 それと、これまでの『ダイ・ハード』シリーズの持ち味は、単なる一警官であるマクレーンが最新装備、ハイテク、膨大な火器、組織された傭兵集団という巨大な敵を相手に圧倒的劣勢の中、ふとした知恵や思い切りでギリギリ土壇場の逆転劇を見せる、という痛快さにあったと思う。それは物語全体でもそうだし、個々の戦闘場面でもそうだった。が、今回は息子がCIAということもあり、マクレーン側もそこそこ充分な火器を持っている。人数こそ息子と二人と少ないが、すくなくとも対等にドンパチできており、「圧倒的不利の中で知恵を絞る」という面白みがほとんど感じられない。

 それから息子とコンビを組むという趣向だが、息子もたくましく武器に通じたタフガイというマクレーンの同類であるため、これまた面白みに欠ける。たとえば前作では、肉体的には虚弱なハッカー青年とハイテク駄目人間のマクレーンが組むことでピントがずれたやりとりになったり、ハッカー青年がマクレーンの行動に驚愕したり呆れたり、という楽しさがあったが、今回はそういうのがない。基本的に二人のタフガイが大量の火器でもって銃撃戦しまくる、というだけだ。先に書いたように物語の緩急もあまりない。ただし銃弾量、爆発の火薬量、カーチェイスや戦闘ヘリの破壊力、などはすごい。というか、もはやそれだけで勝負している。

 あとは趣味の問題だ。が、こりゃやっぱB級だろう。 


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