『浮世の画家』 カズオ・イシグロ ☆☆☆☆☆
イシグロの初期作品を読了。これはデビュー作『遠い山なみの光』に続く二作目である。タイトルから連想される通り日本が舞台で、画家の話だ。といっても浮世絵画家ではない。タイトルの「浮世」には違う意味がある。
アマゾンの内容紹介にはこう書かれている。「戦時中、日本精神を鼓舞する作風で名をなした画家の小野。多くの弟子に囲まれ、大いに尊敬を集める地位に . . . 本文を読む
『シルビアのいる街で』 ホセ・ルイス・ゲリン監督 ☆☆☆☆
日本版DVDで鑑賞。ビクトル・エリセ監督絶賛ということで入手した。
それにしても、相当ユニークな映画である。こんな映画今まで観たことがない。まあなんというか、これといって何も起きないというか、きれいさっぱり何の説明もない映画である。これといって何も起きない映画は他にもあるが、この映画はそれをさらにおし進めた感じだ。映像は確かに . . . 本文を読む
『他人まかせの自伝――あとづけの詩学』 アントニオ・タブッキ ☆☆☆☆
久しぶりにタブッキの新刊が出た、ということで飛びつくようにして買った『他人まかせの自伝』。残念ながら小説じゃないが、テキストの虚構性とその依って立つコンテキストにきわめて意識的なタブッキの場合、エッセーと小説の境界線はそれほど明確ではないのである。アマゾンの内容紹介にも「フィクションと現実を行き来するように語られるエッ . . . 本文を読む
『どーも』 小田和正 ☆☆☆☆☆
小田和正の新譜が出た、ということで迷った挙句に購入。もともとオフコース大好き人間の私だが、小田和正のソロ・アルバムは初期を除いていまいちテンションが上がらなかった。『BETWEEN THE WORD & THE HEART』ぐらいまではまだオフコースっぽくて良かったが、「東京ラブストーリー」あたりからおかしくなってきて、『Looking Back』で決定的 . . . 本文を読む
『遠い水平線』 アントニオ・タブッキ ☆☆☆☆
再読。写真は文庫のだが私が持っているのは単行本である。これはタブッキ作品の中では早くに翻訳されたものの一つだが、『インド夜想曲』や『供述によるとペレイラは…』などに比べると言及されることが少なく、マイナーな印象がある。それはおそらく、一般につかみどころのないタブッキ作品の中でも、本作がとりわけつかみどころのない作品のせいではないだろうか。
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