『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』 田中重雄監督 ☆☆☆★
DVDで再見。自慢じゃないが私はこの『ガメラ対バルゴン』のDVDを所有している。昭和ガメラシリーズで持っているのはこれだけだ、『対ギャオス』も欲しいがもう売っていない。残念だなあ。
昭和ガメラシリーズといえば、子供主導で展開するストーリー、臆面もないご都合主義、ちゃちいセットと特撮、など大映テイスト満載という印象だが、そんな中にあってこの『対バルゴン』は異色作と言われている。何が異色かというと、まず子供が主人公でないばかりか、そもそも子供が出てこない。そして欲望むき出しの大人達が犯罪もの的なストーリーを繰り広げ、全体にダークな雰囲気が漂っている。特撮も結構いける(もちろん当時にしてはだが)。
というわけで他のガメラものとは一味違う本作だが、大映テイストが完全に失われているわけではもちろんない。大体ガメラからして、でかい亀、手足を引っ込めた穴から火を噴射してグルグル回転しながら飛ぶという、明らかに無理のある荒唐無稽なキャラクターだ。恐竜型でいかにも本格派なムードを漂わせたゴジラとは違う。しかしそういう奇想天外なアイデアを平然と出してくるのが大映の面白さで、そういう面白さは本作でも十分味わえる。
まずバルゴンの造形がなかなかいい。カメレオンあたりをアレンジしたと思われるが、爬虫類っぽい感じが出ている。でかい頭につぶらな瞳が印象的だ。武器も多彩で、長く伸びる舌の先から冷凍液を出し、背中の角からは虹を出す。この虹にふれると人だろうが戦車だろうが消滅してしまう。それからバルゴンの血液は紫色で、水に沈むと皮膚が溶け血液が流れ出して死んでしまう。ユニークな特徴てんこ盛りだが、さらにバルゴンのまぶたはなんと左右に閉じるのである。いやもう、思いついたこと全部盛り込みましたみたいな節操のなさ。このやりすぎ感は明らかに大映である。
一方ガメラはというと、他の昭和シリーズが手元にないので比較はできないがなかなか凶悪な面構えをしていてかっこいい。少なくとも平成ガメラの一作目より(顔つきに関しては)いい。平成ガメラは三作目を除いてなんかヌイグルミっぽいかわいい顔をしているからなあ。それから基本的に四足で這っているのもいい。バルゴンも四足なので、いかにも動物同士の決闘という雰囲気が出ている。人間みたいに組み合ってプロレスをするのでなく、噛み付いたりするのもいい。
さて、物語はまず三人の男達が南の島にオパールをとりに行く。小野寺という男がエゴむき出しにして仲間を殺害し、オパールを独り占めしようとする。ところがびっくりこのオパール実はバルゴンの卵で、船の中で水虫治療用赤外線を浴びて孵ってしまう。バルゴンは日本に上陸し破壊の限りをつくし、調子に乗って大阪城まで凍らせる。さて熱エネルギーを好むガメラがバルゴンの殺人光線に惹かれて飛来し、闘争本能のままに怪獣対決が始まる。と思ったらガメラはあっさり凍ってしまう。南の島から心配してやってきた女とオパール取りの生き残りの男が協力し、バルゴンについてさまざまな情報を提供する。人間達はさまざまな手を使ってバルゴンを退治、つまり水の中におびきよせようとするがうまくいかない。最後、万策尽きたかと思われた時に再びガメラが飛来し(氷が溶けてまた動けるようになったのである)、最後の決戦が始まる。
というわけで、物語はおおざっぱにいうと秘境探検もの、犯罪もの、怪獣もの、という風にテイストを変えながら展開する。人間ドラマの部分はかなりダークだ。しかしこの小野寺という男は卑怯過ぎるなあ。顔もむさいし。悪役のテンプレートみたいな奴だ。
ガメラとバルゴンの戦いシーンは意外と少なく、人間が色々工夫してやっつけようとするのがメインだが、ただ単に火力で押しまくろうというのではなく、怪獣の弱点をついていこうとするアプローチはなかなか面白い。ガメラシリーズはこういう理屈っぽいところがあって、これは一作目の『ガメラ』も『対ギャオス』もそうだった。本作ではまずバルゴンをダイヤで琵琶湖におびき寄せようとし、次に赤外線をダイヤにあてて試し、小野寺ごとダイヤをバルゴンに喰われると今度は鏡で虹を反射してバルゴン自身に当てようとする。七転び八起き、この不屈の精神には頭が下がる。
ところでそうやって計画を準備する間、バルゴンを足止めするために毎回人工雨を降らせるのだが、雨に降られてへたっているバルゴンの姿は情けなくて笑える。
さて、最後のガメラとバルゴンの対決、ガメラがバルゴンを琵琶湖に引きずり込んで勝ちをおさめる。それまでさんざんバルゴンを水に沈めようとして失敗したあとなので、この勝ち方は理屈にかなっていて納得できる。単に主人公だから勝ったわけじゃないのである。全身から紫の血を流すバルゴンはなかなか痛々しい。いつもぱっちり見開いているつぶらな瞳が無表情なだけに、妙にかわいそうである。最後に湖の中から断末魔の虹が出てくるのも感慨ひとしおだ。
そして怪獣対決が終わったあと、なんとこの映画は主人公の男と南の島の女のとってつけたようなロマンス・シーンで終わる。二人がいい感じになって手なんか握ったりするのである。かなりヘンだ。こんな終わり方をする怪獣ものは他にないのではないか。そして昭和ガメラシリーズといえばガメラ・マーチだが、この時点ではまだ存在しなかったらしくガメラ・マーチは流れない。あの能天気でうるさいガメラ・マーチが嫌いな私にとってはありがたい。
それにしても、考えてみるとあのバルゴンの卵はいやに小さい。ダチョウの卵でももっとでかいだろう。それに誕生シーンではバルゴンはせいぜい大きめのトカゲ程度である。その掌サイズのバルゴンが、小野寺がマージャンしているうちに全長80メートルにまででかくなってしまう。ものすごい成長率だ。
DVDで再見。自慢じゃないが私はこの『ガメラ対バルゴン』のDVDを所有している。昭和ガメラシリーズで持っているのはこれだけだ、『対ギャオス』も欲しいがもう売っていない。残念だなあ。
昭和ガメラシリーズといえば、子供主導で展開するストーリー、臆面もないご都合主義、ちゃちいセットと特撮、など大映テイスト満載という印象だが、そんな中にあってこの『対バルゴン』は異色作と言われている。何が異色かというと、まず子供が主人公でないばかりか、そもそも子供が出てこない。そして欲望むき出しの大人達が犯罪もの的なストーリーを繰り広げ、全体にダークな雰囲気が漂っている。特撮も結構いける(もちろん当時にしてはだが)。
というわけで他のガメラものとは一味違う本作だが、大映テイストが完全に失われているわけではもちろんない。大体ガメラからして、でかい亀、手足を引っ込めた穴から火を噴射してグルグル回転しながら飛ぶという、明らかに無理のある荒唐無稽なキャラクターだ。恐竜型でいかにも本格派なムードを漂わせたゴジラとは違う。しかしそういう奇想天外なアイデアを平然と出してくるのが大映の面白さで、そういう面白さは本作でも十分味わえる。
まずバルゴンの造形がなかなかいい。カメレオンあたりをアレンジしたと思われるが、爬虫類っぽい感じが出ている。でかい頭につぶらな瞳が印象的だ。武器も多彩で、長く伸びる舌の先から冷凍液を出し、背中の角からは虹を出す。この虹にふれると人だろうが戦車だろうが消滅してしまう。それからバルゴンの血液は紫色で、水に沈むと皮膚が溶け血液が流れ出して死んでしまう。ユニークな特徴てんこ盛りだが、さらにバルゴンのまぶたはなんと左右に閉じるのである。いやもう、思いついたこと全部盛り込みましたみたいな節操のなさ。このやりすぎ感は明らかに大映である。
一方ガメラはというと、他の昭和シリーズが手元にないので比較はできないがなかなか凶悪な面構えをしていてかっこいい。少なくとも平成ガメラの一作目より(顔つきに関しては)いい。平成ガメラは三作目を除いてなんかヌイグルミっぽいかわいい顔をしているからなあ。それから基本的に四足で這っているのもいい。バルゴンも四足なので、いかにも動物同士の決闘という雰囲気が出ている。人間みたいに組み合ってプロレスをするのでなく、噛み付いたりするのもいい。
さて、物語はまず三人の男達が南の島にオパールをとりに行く。小野寺という男がエゴむき出しにして仲間を殺害し、オパールを独り占めしようとする。ところがびっくりこのオパール実はバルゴンの卵で、船の中で水虫治療用赤外線を浴びて孵ってしまう。バルゴンは日本に上陸し破壊の限りをつくし、調子に乗って大阪城まで凍らせる。さて熱エネルギーを好むガメラがバルゴンの殺人光線に惹かれて飛来し、闘争本能のままに怪獣対決が始まる。と思ったらガメラはあっさり凍ってしまう。南の島から心配してやってきた女とオパール取りの生き残りの男が協力し、バルゴンについてさまざまな情報を提供する。人間達はさまざまな手を使ってバルゴンを退治、つまり水の中におびきよせようとするがうまくいかない。最後、万策尽きたかと思われた時に再びガメラが飛来し(氷が溶けてまた動けるようになったのである)、最後の決戦が始まる。
というわけで、物語はおおざっぱにいうと秘境探検もの、犯罪もの、怪獣もの、という風にテイストを変えながら展開する。人間ドラマの部分はかなりダークだ。しかしこの小野寺という男は卑怯過ぎるなあ。顔もむさいし。悪役のテンプレートみたいな奴だ。
ガメラとバルゴンの戦いシーンは意外と少なく、人間が色々工夫してやっつけようとするのがメインだが、ただ単に火力で押しまくろうというのではなく、怪獣の弱点をついていこうとするアプローチはなかなか面白い。ガメラシリーズはこういう理屈っぽいところがあって、これは一作目の『ガメラ』も『対ギャオス』もそうだった。本作ではまずバルゴンをダイヤで琵琶湖におびき寄せようとし、次に赤外線をダイヤにあてて試し、小野寺ごとダイヤをバルゴンに喰われると今度は鏡で虹を反射してバルゴン自身に当てようとする。七転び八起き、この不屈の精神には頭が下がる。
ところでそうやって計画を準備する間、バルゴンを足止めするために毎回人工雨を降らせるのだが、雨に降られてへたっているバルゴンの姿は情けなくて笑える。
さて、最後のガメラとバルゴンの対決、ガメラがバルゴンを琵琶湖に引きずり込んで勝ちをおさめる。それまでさんざんバルゴンを水に沈めようとして失敗したあとなので、この勝ち方は理屈にかなっていて納得できる。単に主人公だから勝ったわけじゃないのである。全身から紫の血を流すバルゴンはなかなか痛々しい。いつもぱっちり見開いているつぶらな瞳が無表情なだけに、妙にかわいそうである。最後に湖の中から断末魔の虹が出てくるのも感慨ひとしおだ。
そして怪獣対決が終わったあと、なんとこの映画は主人公の男と南の島の女のとってつけたようなロマンス・シーンで終わる。二人がいい感じになって手なんか握ったりするのである。かなりヘンだ。こんな終わり方をする怪獣ものは他にないのではないか。そして昭和ガメラシリーズといえばガメラ・マーチだが、この時点ではまだ存在しなかったらしくガメラ・マーチは流れない。あの能天気でうるさいガメラ・マーチが嫌いな私にとってはありがたい。
それにしても、考えてみるとあのバルゴンの卵はいやに小さい。ダチョウの卵でももっとでかいだろう。それに誕生シーンではバルゴンはせいぜい大きめのトカゲ程度である。その掌サイズのバルゴンが、小野寺がマージャンしているうちに全長80メートルにまででかくなってしまう。ものすごい成長率だ。
拙Blogでは以前から昭和ガメラシリーズについての感想記事をまとめており、今回下記TBの更新中にてこちらの記事を引用・ご紹介させて頂きましたので、ご挨拶に参上した次第です。差し支えなければ拙Blogもご笑覧頂ければ幸いです。
乱文ご無礼致しました。それではこれにて失礼します。
ブログお邪魔しましたが見事にガメラ一筋ですね。感服致しました。
昭和ガメラシリーズはなかなかソフトが入手できないのがつらいです。『対ギャオス』はぜひ観たいのですが・・・
その次が「大怪獣空中戦ガメラ対ギャオス」
その次が「ガメラ対大魔獣ジャイガー」です。
「大怪獣ガメラ」「ガメラ対宇宙怪獣バイラス」「ガメラ対大悪獣ギロン」「ガメラ対深海怪獣ジグラ」「宇宙怪獣ガメラ」も嫌いではないですけどね。
確かにこの「ガメラ対バルゴン」変なとこは多いですけどね。 おっしゃるようにバルゴンの卵が小さいすぎる。同じ怪獣の卵でもモスラやゴジラの卵はあんなにでかいのに、普通のワニやカメの卵より少し大きいくらいでしかないし、
確かにあれが大怪獣の卵だと言われても信用出来ないかもしれません。
それにバルゴンは水に浸かると皮膚が溶けて、冷凍液も出せなくなる筈なのに、貨物船淡路丸が爆発して、神戸港に上陸するまで海を泳いできてるし、確かに皮膚は溶けてるけど冷凍液は出せてるし。
海水だからあまりダメージ受けてないってことなんでしょうかね?
でもこの作品好きですけどね
「ギャオス」はDVDを持ってますが、「ジャイガー」を一度、ちゃんと観てみたいですね。