アブソリュート・エゴ・レビュー

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Ecology Of Everyday Life 毎日の環境学

2006-05-07 14:23:17 | 音楽
『Ecology Of Everyday Life 毎日の環境学』 小沢健二   ☆☆☆☆☆

 小沢健二の新譜を入手した。完全なインストルメンタル・アルバムである。オザケンのアルバムを全部聴いているわけではないのでどういう変遷の結果ここにたどり着いたのか分からないが、少なくとも『LIFE』の頃とは随分違う。前作『Eclectic』でだいぶ変化したらしく、サウンド的には『Eclectic』の延長線上にあるらしい。『LIFE』も好きだがこれも良い。好みの音である。

 エレクトロニカ的な、エディットによって成立しているような音楽だが、ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、アコースティックギター、リコーダー、トランペットなど、アコースティックな音がメインになっていて、ジャケットやタイトルからイメージされる通りの非常にオーガニックな音になっている。実際に音を出しているプレイヤーはジャズ・ミュージシャンが多いようだ。とはいえ、それぞれの楽器がソロをとって自己主張したり、AメロBメロとメロディによって展開していくような音楽ではなく、音の組み合わせとループで聴かせるアンビエント的アプローチになっている。だから「癒し系」音楽として聴く人もいるかも知れない。しかしアンビエントと言い切ってしまうにはそれぞれの音がノイズ=無意味に徹してはおらず、「演奏」としての主張を持っている感じ。そういう意味ではジャズ的なところもある。ひたすらまったりではなく、微妙な緊張感があるのだ。

 ゴージャスで元気いっぱいのポップスだった『LIFE』の頃とは全然違うが、共通するものもある。冒頭の『The River あの川』で聴けるポジティヴで茶目っ気のある音、この永遠の少年のような感性はやはり小沢健二のものだと思わせる。それからこの、シャカシャカとかき鳴らされるアコースティック・ギターの音に、あのオザケンの存在を感じる。

 昔のオザケンが好きな人には賛否両論らしいが、個人的には純粋に音楽的に素晴らしいアルバムだと思う。オーガニックで、緻密で、ナチュラルで、繊細で、緊張感があって、美しい。小沢健二のヴォーカルはあまり上手とは言えないので、歌がなくなった分音楽的な完成度は増しているようにさえ感じられる。『Eclectic』も買ってみようかな。


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