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『死者のメッセージ』 ☆☆☆
刑事コロンボ41個目のエピソード。これは旧シリーズ最終の第7シーズン開幕作で、最後から5番目ということになる。
話としてはずばりダイイング・メッセージもので、金庫に閉じ込められて死んだ男が奇妙な痕跡を残している、さてそのココロは。という謎が最初から呈示され、その解決がそのまま最後の決め手となる。しかしこのダイイング・メッセージはあまり気がきいたものではなく、物理的に隠されていたものが出てくるというだけだ。それほど面白みはない。
このエピソードはとにかく犯人役のルース・ゴードンの魅力、これに尽きる。『ローズマリーの赤ちゃん』でけたたましい隣人のおばあさんをやっていた女優さんだが、一度見たら忘れられない強烈な存在感である。子供のような小柄な体に独特の身振り、豊かな表情、そしてあの喋り方と声。このエピソードは吹き替えでなくオリジナル音声で観るべきである。吹き替えだとアビーは知的な老婦人という感じだが、ルース・ゴードン本人の喋りは天真爛漫で茶目っ気に溢れている。それから非常な高齢にもかかわらず、動きがとても軽快だ。飛び跳ねるように歩くシーンもあり、まるで少女のように可愛らしい。『ローズマリーの赤ちゃん』での毒々しさ、図々しさと別人のようだ。
そしてこのルース・ゴードンが冒す犯罪のなんと哀しいことだろう。これが本作の肝である。
ルース・ゴードンが演じるのは売れっ子ミステリ作家のアビー。彼女が殺すのは義理の甥。そして動機は、愛する姪を殺された復讐である。地位と名声と財産に恵まれた彼女が、すべてを投げ打って殺人という最悪の犯罪に手を染める。愛する姪の無念を晴らすために。年老いた彼女は弱い、体力的には子供と同じだ。その彼女が若い男を殺すために知恵を振り絞り、義理の甥を呼び出し、金庫の中に閉じ込める。ドアを閉める直前、彼女は叫ぶ。「私のフェリスを殺したわね! 私に分からないと思ったの!」
その後コロンボが現れて徐々に彼女を追いつめていくのはいつもと同じだが、このエピソードでは更に残酷なことに、アビーの身近な人間たちが一人、また一人と彼女を裏切っていく。アビーが犯人だと目星をつけて、脅迫者に変貌するのである。アビーはオールド・ミスであり、配偶者はいない。親戚もいないようだ。死んだ姪が唯一の肉親だったのである。なんという孤独だろうか。これじゃアビーがあまりにもかわいそうだ。家族同然だったはずの秘書が、そして弁護士が牙を剥いた時、彼女は何を思っただろう。
コロンボが彼女の姪のことに触れ、「本当に辛かったでしょう」といたわりの言葉をかけた時、アビーはコロンボに言う。「あなたがなんだか好きになってきましたわ。コロンボさん、あなたは親切な人ですね」しかしコロンボはそんな彼女を容赦なく突き放す。「いや、それを当てにはしないことです。当てにしてはいけません」この時のアビーの哀しそうな顔が忘れられない。
やがてダイイング・メッセージが解読され、アビーはコロンボに逮捕される。アピーは最後にコロンボに言う。「もしもあなたが姪の事故を捜査してくださってたら、こんなことはせずにすんだでしょう」これが本作におけるルース・ゴードン最後のセリフである。この言葉に込められた無念はいかばかりか。これはおそらく、犯人がコロンボに言ったもっとも哀しいセリフなのである。
刑事コロンボ41個目のエピソード。これは旧シリーズ最終の第7シーズン開幕作で、最後から5番目ということになる。
話としてはずばりダイイング・メッセージもので、金庫に閉じ込められて死んだ男が奇妙な痕跡を残している、さてそのココロは。という謎が最初から呈示され、その解決がそのまま最後の決め手となる。しかしこのダイイング・メッセージはあまり気がきいたものではなく、物理的に隠されていたものが出てくるというだけだ。それほど面白みはない。
このエピソードはとにかく犯人役のルース・ゴードンの魅力、これに尽きる。『ローズマリーの赤ちゃん』でけたたましい隣人のおばあさんをやっていた女優さんだが、一度見たら忘れられない強烈な存在感である。子供のような小柄な体に独特の身振り、豊かな表情、そしてあの喋り方と声。このエピソードは吹き替えでなくオリジナル音声で観るべきである。吹き替えだとアビーは知的な老婦人という感じだが、ルース・ゴードン本人の喋りは天真爛漫で茶目っ気に溢れている。それから非常な高齢にもかかわらず、動きがとても軽快だ。飛び跳ねるように歩くシーンもあり、まるで少女のように可愛らしい。『ローズマリーの赤ちゃん』での毒々しさ、図々しさと別人のようだ。
そしてこのルース・ゴードンが冒す犯罪のなんと哀しいことだろう。これが本作の肝である。
ルース・ゴードンが演じるのは売れっ子ミステリ作家のアビー。彼女が殺すのは義理の甥。そして動機は、愛する姪を殺された復讐である。地位と名声と財産に恵まれた彼女が、すべてを投げ打って殺人という最悪の犯罪に手を染める。愛する姪の無念を晴らすために。年老いた彼女は弱い、体力的には子供と同じだ。その彼女が若い男を殺すために知恵を振り絞り、義理の甥を呼び出し、金庫の中に閉じ込める。ドアを閉める直前、彼女は叫ぶ。「私のフェリスを殺したわね! 私に分からないと思ったの!」
その後コロンボが現れて徐々に彼女を追いつめていくのはいつもと同じだが、このエピソードでは更に残酷なことに、アビーの身近な人間たちが一人、また一人と彼女を裏切っていく。アビーが犯人だと目星をつけて、脅迫者に変貌するのである。アビーはオールド・ミスであり、配偶者はいない。親戚もいないようだ。死んだ姪が唯一の肉親だったのである。なんという孤独だろうか。これじゃアビーがあまりにもかわいそうだ。家族同然だったはずの秘書が、そして弁護士が牙を剥いた時、彼女は何を思っただろう。
コロンボが彼女の姪のことに触れ、「本当に辛かったでしょう」といたわりの言葉をかけた時、アビーはコロンボに言う。「あなたがなんだか好きになってきましたわ。コロンボさん、あなたは親切な人ですね」しかしコロンボはそんな彼女を容赦なく突き放す。「いや、それを当てにはしないことです。当てにしてはいけません」この時のアビーの哀しそうな顔が忘れられない。
やがてダイイング・メッセージが解読され、アビーはコロンボに逮捕される。アピーは最後にコロンボに言う。「もしもあなたが姪の事故を捜査してくださってたら、こんなことはせずにすんだでしょう」これが本作におけるルース・ゴードン最後のセリフである。この言葉に込められた無念はいかばかりか。これはおそらく、犯人がコロンボに言ったもっとも哀しいセリフなのである。
コロンボで泣いたのは後にも先にもこの作品だけでした
高校生のムスメも泣きました。