『魅惑劇』 ノヴェラ ☆☆☆★
確か昔アナログ盤で持っていたような気がするノヴェラの『魅惑劇』をCDで購入。これは懐かしい。
ジャパニーズ・プログレ、略してジャパグレとも呼ばれる音楽ジャンルが存在することを、世の善男善女の皆様はご存知だろうか。決してヒットチャートをにぎわしたりヘイヘイヘイに出演したりすることはなく、レコードが出たと思ったら廃盤になるの繰り返しだが、不思議とジャンル自体が消滅してしまうことはない。今のところは。ジャンルを支えているマニアックな人々が確実に存在するのである。このノヴェラは結構昔のバンドだが、そういうジャパニーズ・プログレの中ではおそらく最メジャーと思われる。
CDジャケットを見ていただければ大体音の想像もつくと思う。幽玄である。バンドメンバーのルックスは全員男にもかかわらず宝塚系で、元祖ヴィジュアル系と言われている。プログレにもジャズ系クラシック系ハードロック系と色々な傾向があり、まあプログレであるからにはすべての要素がどこかにあるわけだが、このノヴェラはどちらかというとハードロック寄りだ。このアルバムでいうとA面部分(1~3)が割とコンパクトでポップなハードロック調、B面部分の後半が本領発揮の複雑なプログレ曲となっている。ちなみにこれがノヴェラのデビュー作である。
バンドはドラムにベース、ギター二人にキーボード、ヴォーカルという6人編成。作曲はもっぱらギタリストの一人が行っている。しかしサウンドの特徴はなんといってもこの独特のヴォーカルである。一曲目のイントロからいきなりアカペラのコーラスが炸裂するのだが、スリー・オクターヴ・ヴォイスが売り物の超ハイトーンヴォイスだ。線が細くて女っぽいのでいやにカン高く聞こえる。インパクトは絶大だが、好みは分かれるだろう。やたら高いシャウトをするところでは「すげえな」と思うが、普通に歌っているところではあまりうまいとは思えない。ビブラートもかけ過ぎでアナクロな印象。まあ音楽性が大仰なんだから合ってるという見方もあるが。
ノヴェラがジャパグレ中メジャーなのは、幽玄なムード、ハードロック的要素、そして美しいメロディ、それぞれのバランスがいいことにあると思われる。演奏は充分複雑で幻想的だが、旋律は難解過ぎずメロディアスでキャッチーだ。曲の構成も演劇的で、とても分かりやすく盛り上がる。プログレ・ハードの王道的アプローチだ。
私の好みで言うと前半の3曲は大して面白くないが、後半3曲、特に最後の2曲は聞き応えがある。3曲目『レティシア』は「走れメロス」のような物語詞を持った曲で、なかなか凝ったアレンジが施されているが詞が少女マンガ的でちょっと引いてしまう。曲の雰囲気も軽め。それからヴォーカルの音程が途中ちょっと気になる。『少年期』になるとぐっと濃厚な世界が広がる。これはほぼインスト曲だが、まずは冷たいシンセサイザーが奏でるメランコリックな旋律で瞑想的なムードを醸し出し、ドラムが入ってからは劇的に盛り上がる。ヴォーカルも超カン高い声で「アァ~~~~」と叫びまくるがこれはすごい。こんな声は普通出ないぞ。メドレーの後半『時の崖』は歌が入ったアップテンポの曲でまあまあ。
最後の『魅惑劇』はタイトル・チューンであり文句なくベスト・チューン。重たいメランコリーを引きずった曲で、重厚なメロトロンで幕を空ける。陶酔的なヴォーカルとピアノ、クラシック・ギター主体の静かなバッキングが絡み合い、幻想的なムードで進行してゆく。途中クラシック・ギターのソロになったりピアノが入ったジャズっぽい演奏になったりと、達者なアレンジ力を見せつける。霧の森に迷い込むような長々と続く間奏を経て、やはりメロトロンが吹き荒れる荘厳なクライマックスに突入する。『魅惑劇』というタイトル通りとても演劇的な曲だ。この曲のサビも『少年期』と同じく、歌詞がない「アァ~~~~」という叫びのみだが、このかん高い突き刺すようなヴォーカルにはこれが一番合ってるような気がする。
ノヴェラはこの後も何枚か出していてアレンジ力・演奏力はだんだん強化されていくが、ヴォーカルが一番高い声を出しているのはこのファーストである。
確か昔アナログ盤で持っていたような気がするノヴェラの『魅惑劇』をCDで購入。これは懐かしい。
ジャパニーズ・プログレ、略してジャパグレとも呼ばれる音楽ジャンルが存在することを、世の善男善女の皆様はご存知だろうか。決してヒットチャートをにぎわしたりヘイヘイヘイに出演したりすることはなく、レコードが出たと思ったら廃盤になるの繰り返しだが、不思議とジャンル自体が消滅してしまうことはない。今のところは。ジャンルを支えているマニアックな人々が確実に存在するのである。このノヴェラは結構昔のバンドだが、そういうジャパニーズ・プログレの中ではおそらく最メジャーと思われる。
CDジャケットを見ていただければ大体音の想像もつくと思う。幽玄である。バンドメンバーのルックスは全員男にもかかわらず宝塚系で、元祖ヴィジュアル系と言われている。プログレにもジャズ系クラシック系ハードロック系と色々な傾向があり、まあプログレであるからにはすべての要素がどこかにあるわけだが、このノヴェラはどちらかというとハードロック寄りだ。このアルバムでいうとA面部分(1~3)が割とコンパクトでポップなハードロック調、B面部分の後半が本領発揮の複雑なプログレ曲となっている。ちなみにこれがノヴェラのデビュー作である。
バンドはドラムにベース、ギター二人にキーボード、ヴォーカルという6人編成。作曲はもっぱらギタリストの一人が行っている。しかしサウンドの特徴はなんといってもこの独特のヴォーカルである。一曲目のイントロからいきなりアカペラのコーラスが炸裂するのだが、スリー・オクターヴ・ヴォイスが売り物の超ハイトーンヴォイスだ。線が細くて女っぽいのでいやにカン高く聞こえる。インパクトは絶大だが、好みは分かれるだろう。やたら高いシャウトをするところでは「すげえな」と思うが、普通に歌っているところではあまりうまいとは思えない。ビブラートもかけ過ぎでアナクロな印象。まあ音楽性が大仰なんだから合ってるという見方もあるが。
ノヴェラがジャパグレ中メジャーなのは、幽玄なムード、ハードロック的要素、そして美しいメロディ、それぞれのバランスがいいことにあると思われる。演奏は充分複雑で幻想的だが、旋律は難解過ぎずメロディアスでキャッチーだ。曲の構成も演劇的で、とても分かりやすく盛り上がる。プログレ・ハードの王道的アプローチだ。
私の好みで言うと前半の3曲は大して面白くないが、後半3曲、特に最後の2曲は聞き応えがある。3曲目『レティシア』は「走れメロス」のような物語詞を持った曲で、なかなか凝ったアレンジが施されているが詞が少女マンガ的でちょっと引いてしまう。曲の雰囲気も軽め。それからヴォーカルの音程が途中ちょっと気になる。『少年期』になるとぐっと濃厚な世界が広がる。これはほぼインスト曲だが、まずは冷たいシンセサイザーが奏でるメランコリックな旋律で瞑想的なムードを醸し出し、ドラムが入ってからは劇的に盛り上がる。ヴォーカルも超カン高い声で「アァ~~~~」と叫びまくるがこれはすごい。こんな声は普通出ないぞ。メドレーの後半『時の崖』は歌が入ったアップテンポの曲でまあまあ。
最後の『魅惑劇』はタイトル・チューンであり文句なくベスト・チューン。重たいメランコリーを引きずった曲で、重厚なメロトロンで幕を空ける。陶酔的なヴォーカルとピアノ、クラシック・ギター主体の静かなバッキングが絡み合い、幻想的なムードで進行してゆく。途中クラシック・ギターのソロになったりピアノが入ったジャズっぽい演奏になったりと、達者なアレンジ力を見せつける。霧の森に迷い込むような長々と続く間奏を経て、やはりメロトロンが吹き荒れる荘厳なクライマックスに突入する。『魅惑劇』というタイトル通りとても演劇的な曲だ。この曲のサビも『少年期』と同じく、歌詞がない「アァ~~~~」という叫びのみだが、このかん高い突き刺すようなヴォーカルにはこれが一番合ってるような気がする。
ノヴェラはこの後も何枚か出していてアレンジ力・演奏力はだんだん強化されていくが、ヴォーカルが一番高い声を出しているのはこのファーストである。
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