崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

魏明温画伯の絵の展示会へ誘う

2008年10月16日 04時09分28秒 | エッセイ
 韓国の魏明温画伯の絵の展示会が2008年11月16日から下関ギャラリーレトロで行われる。そのパンフに私が次のように誘いの文を寄せた。

 映像が氾濫する時代に生きる我々にとっては静物の絵の前に立ち留まって考えることはまれであろう。忙しさに流される人の生活とは空虚なことにならざるを得ない。死魚は流されても、波に立ち留まり、また遡る生魚のように、さらに湧き飛ぶような自我を悟る生活は美しい。流れと波を切って自我に戻るために絵の前に立つ。その静かな時間は宝物、風景、静物などに視線を投じているといろいろな想像が広がるはずである。
初期ルネサンスまでは旅行などで風景をスケッチしたり、肖像画を描いたりするのが流行ったが、それらは写真によって替わった。写真はまた活動写真に替わってきた。しかし絵は人の感情と思索を、写真は自然そのままを、活動写真は力を表現するようになった。特に近代では絵と写真は芸術性を争った。絵と活動写真は対照的である。しかしそれらは絵の世界を共有している。活動写真を分析しようとすると停止画面に戻らないといけない。映像とは反対に立ち留まる芸術、その絵の前に立ち留まることになる。
 絵は明暗と色などによって創造されるものである。光線に照らされ、光と色の調和と変化に富む芸術、さらにその美の世界を越えて、思想や時代を表現する。
魏明温画伯の絵の展示会へ誘う。魏画伯は最近まで下関に居住したが、現在韓国全羅南道長興市青少年修練館の館長であり、各種展示会などで作品を出している。この度縁のある下関にて展示会をしようとしている。ぜひおいでくださって彼女の絵をごらんになって彼女の世界を味わうことをお勧めしたい。