崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

被差別から文化財へ

2008年10月08日 06時13分46秒 | エッセイ
 韓国のシャーマンの鼓と巫祖の位牌などを韓国の国立国樂院に寄贈する署名をわが家で昨夜行われた。そのために担当学芸官と職員、二人の写真記者がわが家でリスト作成と写真撮影を行った。そのつづみは今は故人となった人間文化財金石出氏からいただいたものである。この鼓は彼らの歴史そのものである。金氏は移動する時には分解して小さくして鞄に入れて持ち運ぶに便利なものである。それだけではない。つづみは巫者の象徴的なものであり、被差別の彼らは祭りを行う時以外には卑賎民という身分を隠すためにもそれを目立たないようにする必要があったと説明してくれた。彼の先祖代々によって使われたものである。金氏と初めて会ったのは1960年代末。私は彼に会って以来韓国の東海岸地方の村々を同行させていただき、一緒に旅に出て、シャーマンの集団生活や儀礼を調査することができた。
 もう一つは全羅南道長興郡冠山の被差別タンゴル巫女の先祖の位牌である。それは表面に紙を 貼って隠して祀ったものであったが、はずしていただいたものである。200年も遡って系譜がわかる貴重なものである。
 私が調査した時には唯一の差別集団のムーダン(巫堂)であったが、ナショナリズムによって伝統文化が尊重されるようになって社会的地位が上昇して人間文化財にもなった。時代の変化と彼らとの古い関係をもつ大事なものを博物館に寄贈すことになった。