皆さま、暑中お見舞い申し上げます。
このところ比較的過ごしやすい日が続いているとはいえ、蒸し暑いのはこの国の夏の避けられない運命。夏ばてや熱中症にはくれぐれもお気をつけくださいますよう。
A tous mes amis sandiens et francophones dans le monde entier, je vous souhaite un excellent ete et de tres bonnes vacances !
フランスの国際サンド学会から研究誌の第33号(新シリーズ)が送られてきました。
本号の特集テーマは「ジョルジュ・サンドと金銭」。七本もの読み応えのある論文が収録されている他、昨年刊行されたサンドの作品や研究書の書評が十本も掲載されており、この研究誌の水準の高さを物語ると同時に、本ブログでもたびたび紹介させて頂いている、ミッシェル・エッケ Michele Hecquet 編集長の並々ならぬ情熱が感じられます(エッケさんは、2004年に日本の仏文学会でサンドについて講演をしてくださいました)。
「ジョルジュ・サンドと金銭」は、以前にパリ第八大学のJose Diaz先生が主催された研究会のテーマであり、本誌はそこでの発表をもととする論文を収録したとのこと。ニコル・モゼ Nicole Mozet 先生のご発案なのだそうです。歴史家であり女性史の研究で名高い Mishelle Perrotミッシェル・ペローの特別寄稿が最初のページを飾っている本号は、いつもにもまして充実しているように思われます。
その中の「生活の糧を得ながら自己の人生を生きる」というMarie-Claude Schapira の 論文を以下に簡単にご紹介します。
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Marie-Claude Schapira の 「生活の糧を得ながら自己の人生を生きる"Vivre sa vie en la gagnant"」は、文学とは直接的な関係がないと思われる金銭というテーマがいかにサンドの実生活で大きな位置を占めていたかを論じている。
貴族の祖母が孫娘のサンドや貧困階層出身の嫁に及ぼした金と権力に関する深い洞察、ミュッセ、ショパン、マンソーとの恋愛については、サンドの年下の男性への母性的愛情といった側面からのみ語られることが多いが、ミュッセの女遊びのつけや彼らが病気のときに必要とした莫大な医療費もサンドが負担していたという事実、ノアンの館に招いた文学や芸術仲間の友人達(バルザック、ゴーチエ、フロベール、デュマ、ツルゲーネフ、ドラクロワ、ヴィヤルド夫妻など)の滞在、もてなし(招待客に応じた家の修理や改装)や食事に関わる費用が想像以上に嵩んだこと、ガルジレスやパレゾーに購入した家の支払いに関する秘話から娘ソランジュやモーリスに残した遺産に関することまで、そこには詳細な数字とサンドが残した資料に基づく説得力ある論が展開されている。
高額な年収を得る作家でありながら、自らカリカチャーに描いているように、サンドはなぜいつも借金取りに追われるような生活をしていたのか。Marie-Claude Schapira は、単に作家の知られざる経済上の現実を明るみに出すだけではなく、その根源をサンドの文学・芸術観あるいはサンド独自の生き方の思想に探り、それらに関わる重要なファクターとして金銭のテーマを捉え、作家が現実に生きることの意味を鋭敏な考察力をもって明らかにしている。
このところ比較的過ごしやすい日が続いているとはいえ、蒸し暑いのはこの国の夏の避けられない運命。夏ばてや熱中症にはくれぐれもお気をつけくださいますよう。
A tous mes amis sandiens et francophones dans le monde entier, je vous souhaite un excellent ete et de tres bonnes vacances !
フランスの国際サンド学会から研究誌の第33号(新シリーズ)が送られてきました。
本号の特集テーマは「ジョルジュ・サンドと金銭」。七本もの読み応えのある論文が収録されている他、昨年刊行されたサンドの作品や研究書の書評が十本も掲載されており、この研究誌の水準の高さを物語ると同時に、本ブログでもたびたび紹介させて頂いている、ミッシェル・エッケ Michele Hecquet 編集長の並々ならぬ情熱が感じられます(エッケさんは、2004年に日本の仏文学会でサンドについて講演をしてくださいました)。
「ジョルジュ・サンドと金銭」は、以前にパリ第八大学のJose Diaz先生が主催された研究会のテーマであり、本誌はそこでの発表をもととする論文を収録したとのこと。ニコル・モゼ Nicole Mozet 先生のご発案なのだそうです。歴史家であり女性史の研究で名高い Mishelle Perrotミッシェル・ペローの特別寄稿が最初のページを飾っている本号は、いつもにもまして充実しているように思われます。
その中の「生活の糧を得ながら自己の人生を生きる」というMarie-Claude Schapira の 論文を以下に簡単にご紹介します。
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Marie-Claude Schapira の 「生活の糧を得ながら自己の人生を生きる"Vivre sa vie en la gagnant"」は、文学とは直接的な関係がないと思われる金銭というテーマがいかにサンドの実生活で大きな位置を占めていたかを論じている。
貴族の祖母が孫娘のサンドや貧困階層出身の嫁に及ぼした金と権力に関する深い洞察、ミュッセ、ショパン、マンソーとの恋愛については、サンドの年下の男性への母性的愛情といった側面からのみ語られることが多いが、ミュッセの女遊びのつけや彼らが病気のときに必要とした莫大な医療費もサンドが負担していたという事実、ノアンの館に招いた文学や芸術仲間の友人達(バルザック、ゴーチエ、フロベール、デュマ、ツルゲーネフ、ドラクロワ、ヴィヤルド夫妻など)の滞在、もてなし(招待客に応じた家の修理や改装)や食事に関わる費用が想像以上に嵩んだこと、ガルジレスやパレゾーに購入した家の支払いに関する秘話から娘ソランジュやモーリスに残した遺産に関することまで、そこには詳細な数字とサンドが残した資料に基づく説得力ある論が展開されている。
高額な年収を得る作家でありながら、自らカリカチャーに描いているように、サンドはなぜいつも借金取りに追われるような生活をしていたのか。Marie-Claude Schapira は、単に作家の知られざる経済上の現実を明るみに出すだけではなく、その根源をサンドの文学・芸術観あるいはサンド独自の生き方の思想に探り、それらに関わる重要なファクターとして金銭のテーマを捉え、作家が現実に生きることの意味を鋭敏な考察力をもって明らかにしている。