小冊子『熱風』のこと。
興味深いので、以下引用させて頂きます。。。
スタジオジブリ出版部
http://www.ghibli.jp/shuppan/
小冊子『熱風』
http://www.ghibli.jp/shuppan/np.html
機関紙「熱風(GHIBLI)」目次紹介
http://www.geocities.jp/solitium/ghibli2005.html
「54ページ分の好奇心 「熱風」編集長・田居 因(たい ゆかり)氏に聞く」
(2004年3月23日読売新聞記事・依田謙一記者)
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/ghibli/cnt_interview_tai.htm
「スタジオジブリの好奇心」をキャッチコピーに、ジブリがPR小冊子を毎月無料で配付している。名前は「熱風」。ジブリの原義である「サハラ砂漠に吹く熱い風」から取ったものだ。
「日本人の食卓」「変わりゆく町の図書館」「私とNPO」「フリーターを考える」――毎号、ユニークなテーマが巻頭特集を飾る。アニメーションスタジオであるジブリが、なぜ、このような小冊子を発刊しようと思ったのか。編集長の田居因さんに聞いた。(依田謙一記者)
――「熱風」を発行しようと思ったきっかけは。
田居 それまでのジブリの出版部というのは、単行本作りが中心でした。ところが、いざ出版しようと思ってもなかなか原稿がたまらない。そこで、雑誌を作れば、連載してもらうことで原稿がたまるかなぁって(笑)。ただ、それは二番目で、一番の理由は、出版を通じて何か面白いことをしたいということなんです。
――一人歩きしているジブリのイメージに耐えられなくなり、自分たちの言葉で発信したくなったのかなと推測したのですが。
田居 いえいえ、もっと単純な話です。もともと鈴木敏夫プロデューサーが言い出したことですが、彼は以前から岩波書店の「図書」や草思社の「草思」といった小冊子を愛読していた。その影響もあって、売れるということよりも企画の面白さで勝負できるものを作ってみてはどうかと。
――販売せず、無料にしたのは。
田居 売ろうという考えは最初からありませんでした。有料にすると、売れ行きを重視するようになって、できないことの方が多くなるんですね。それよりも、時代をしっかり見つめたテーマに取り組んでいくことの方が大切だと思いました。アニメーション作品とは直接的に関わらないかも知れないけど、ジブリが今こういうことに興味を持っているんだと知ってもらえればと。
――一部の書店や三鷹の森ジブリ美術館など、限られた場所でしか手に入らないんですね。
田居 ジブリ関連の本を置いて下さっている常設店から、「常設するメリットはないか」と要望を頂いていましたので、発行はそれに応えるという意味もありました。ただ、「入手できない」といった反響や問い合わせが多くなり、今年から定期購読(http://www.ntv.co.jp/ghibli/shuppan/koudoku.html)を始めています。
――テーマはどのようにして決めているのですか。
田居 正直言って「これ」という方針があるわけではなくて、毎回、手探りの状態です。スタッフごとにいろんな意見があるので、テーマを決めるのは大変ですね。でも、例えばジブリが尊敬している人が興味を持っていることは、追求しても面白いんじゃないかというような視点はあります。創刊号のテーマは、「日本人の食卓」でしたが、これはいろいろお世話になっている作家の井上ひさしさんが、食について取り組んでいらっしゃることが、きっかけになっています。
――では、一年分のテーマ予定があるというようなことではなく……。
田居 行き当たりばったり(笑)。ただ、雑誌ですから、世の中の動きの中でテーマを決めていく方がいいということはありますけどね。取り組んでいるテーマについては、興味を持ってくれる人が各地にいるだろうと信じて選んでいます。それは、決して大きな集団ではないかも知れないけど、“点”で待ってくれている人々。そういう読者を大切にしていきたいんです。
――毎回、ユニークなテーマを扱いながら、内容は決してマニア向けになっていませんね。
田居 それは、編集者である私たちが素人の視点を忘れないようにしているとともに、多くの若い人に読んでもらいたいと思っているからだと思います。もちろん、企画を立案した本人は多くの知識を持っているかも知れませんが、初めて読む若い人に興味を持ってもらわなければ扱う意味がありません。
徳間書店入社後、田居さんが携わった雑誌に「月刊アニメージュ」の創刊があった。当時、先輩だったのが現在の鈴木プロデューサーで、「とにかく怒られに怒られて」出版のいろはを教えられたという。
現在は4人所帯となったジブリ出版部も、「平成狸合戦ぽんぽこ」(1994年)制作時に田居さんが配属された当時は、たった一人。故・黒澤明監督と宮崎駿監督の共著である「何が映画か」(93年)などの単行本を「コツコツ作る日々」だった。
―一人で「出版部」というのも大変だったのでは。
田居 大変でしたけど、ノウハウはありましたからね。意外と知られていませんが、ジブリは徳間書店の一事業部なんです。ですから、作品の関連書籍などを作ったりという出版事業には慣れていたんです。鈴木“先輩”もいましたから、分からなかったら聞けばいいやって(笑)。
――編集者になろうと思ったきっかけは。
田居 小さい頃から、岩波書店の児童文学全集などを読みあさって育った本好き。本とコーヒーがあればそれでOK、という日々をずっと過ごしてきました。早い話が、私には本しかないんです。ですから、今、こういう仕事ができているのは幸福ですね。
――活字離れが叫ばれて久しいですが、かつての田居さんのような子どもが減ってきているのはなぜなんでしょう。
田居 アニメーションスタジオにいてこんなこと言うのも何ですけど、やっぱり映像の力が圧倒的だからでしょう。親にしてみれば、絵本を読み聞かせるより、アニメーションを見せておく方が楽ですから。だからこそ、ジブリが本を作り続けていくことは意味があるんだと思います。
――最近は、「戦後派」と呼ばれた作家、故・堀田善衞さんの著作を復刊したことで話題になりました。
田居 宮崎監督と鈴木プロデューサーが以前から堀田さんを敬愛し、親交があったことで、復刊の話が持ち上がりました。堀田さんというのは、宮崎監督が判断に困った時の指針にしている方なんですね。若い人のなかには、堀田さんを知らない人もいると思いますが、手にとって読んでもらえれば、ジブリがなぜ今、堀田さんの著作を復刊したのかを分かっていただけると思います。
――初めて堀田さんの本を読む人にお薦めの順番はありますか。
田居 復刊された3冊の中では、まず、「時代と人間」から入るのがいいと思います。NHKの番組で行った講議がもとになっているので、言葉も平易です。その後、「路上の人」「聖者の行進」、と続くのが読みやすいでしょう。
――「熱風」次号のテーマは。
田居 「どこへ行く、日本の宇宙開発」です。H2Aロケットの打ち上げ失敗があったことで、宇宙開発について様々な意見があることが分かりました。大きな疑問を持っている人もいれば、強く推進すべきだという人もいる。私個人でいえば、そもそも宇宙開発がどういうものなのか分からない。そうやって考えていくと、ロケット一つ作るのにどれだけの予算が使われているのかといった素朴な疑問も出てきて。特集では、「国産ロケットはなぜ墜ちるのか」の著者であるジャーナリストの松浦晋也さんや、SF作家の小川一水さんなどに執筆していただく予定です。
――今後作っていきたい本は。
田居 今、書店に行くと、たくさんの本が並んでいます。毎年7万点もの本が出版されていますが、一方で残っていく本はとても少ない。売れるということも大切ですが、「残っていく本であるかどうか」ということを大切にしていきたいと思っています。
田居さんから伝わってくるのは、本への強い愛情だ。この愛情によって、田居さんが、そしてジブリ出版部が作っていく「残っていく本」は、アニメーション同様、ジブリの大切な“作品”となっていくことだろう。(了)
興味深いので、以下引用させて頂きます。。。
スタジオジブリ出版部
http://www.ghibli.jp/shuppan/
小冊子『熱風』
http://www.ghibli.jp/shuppan/np.html
機関紙「熱風(GHIBLI)」目次紹介
http://www.geocities.jp/solitium/ghibli2005.html
「54ページ分の好奇心 「熱風」編集長・田居 因(たい ゆかり)氏に聞く」
(2004年3月23日読売新聞記事・依田謙一記者)
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/ghibli/cnt_interview_tai.htm
「スタジオジブリの好奇心」をキャッチコピーに、ジブリがPR小冊子を毎月無料で配付している。名前は「熱風」。ジブリの原義である「サハラ砂漠に吹く熱い風」から取ったものだ。
「日本人の食卓」「変わりゆく町の図書館」「私とNPO」「フリーターを考える」――毎号、ユニークなテーマが巻頭特集を飾る。アニメーションスタジオであるジブリが、なぜ、このような小冊子を発刊しようと思ったのか。編集長の田居因さんに聞いた。(依田謙一記者)
――「熱風」を発行しようと思ったきっかけは。
田居 それまでのジブリの出版部というのは、単行本作りが中心でした。ところが、いざ出版しようと思ってもなかなか原稿がたまらない。そこで、雑誌を作れば、連載してもらうことで原稿がたまるかなぁって(笑)。ただ、それは二番目で、一番の理由は、出版を通じて何か面白いことをしたいということなんです。
――一人歩きしているジブリのイメージに耐えられなくなり、自分たちの言葉で発信したくなったのかなと推測したのですが。
田居 いえいえ、もっと単純な話です。もともと鈴木敏夫プロデューサーが言い出したことですが、彼は以前から岩波書店の「図書」や草思社の「草思」といった小冊子を愛読していた。その影響もあって、売れるということよりも企画の面白さで勝負できるものを作ってみてはどうかと。
――販売せず、無料にしたのは。
田居 売ろうという考えは最初からありませんでした。有料にすると、売れ行きを重視するようになって、できないことの方が多くなるんですね。それよりも、時代をしっかり見つめたテーマに取り組んでいくことの方が大切だと思いました。アニメーション作品とは直接的に関わらないかも知れないけど、ジブリが今こういうことに興味を持っているんだと知ってもらえればと。
――一部の書店や三鷹の森ジブリ美術館など、限られた場所でしか手に入らないんですね。
田居 ジブリ関連の本を置いて下さっている常設店から、「常設するメリットはないか」と要望を頂いていましたので、発行はそれに応えるという意味もありました。ただ、「入手できない」といった反響や問い合わせが多くなり、今年から定期購読(http://www.ntv.co.jp/ghibli/shuppan/koudoku.html)を始めています。
――テーマはどのようにして決めているのですか。
田居 正直言って「これ」という方針があるわけではなくて、毎回、手探りの状態です。スタッフごとにいろんな意見があるので、テーマを決めるのは大変ですね。でも、例えばジブリが尊敬している人が興味を持っていることは、追求しても面白いんじゃないかというような視点はあります。創刊号のテーマは、「日本人の食卓」でしたが、これはいろいろお世話になっている作家の井上ひさしさんが、食について取り組んでいらっしゃることが、きっかけになっています。
――では、一年分のテーマ予定があるというようなことではなく……。
田居 行き当たりばったり(笑)。ただ、雑誌ですから、世の中の動きの中でテーマを決めていく方がいいということはありますけどね。取り組んでいるテーマについては、興味を持ってくれる人が各地にいるだろうと信じて選んでいます。それは、決して大きな集団ではないかも知れないけど、“点”で待ってくれている人々。そういう読者を大切にしていきたいんです。
――毎回、ユニークなテーマを扱いながら、内容は決してマニア向けになっていませんね。
田居 それは、編集者である私たちが素人の視点を忘れないようにしているとともに、多くの若い人に読んでもらいたいと思っているからだと思います。もちろん、企画を立案した本人は多くの知識を持っているかも知れませんが、初めて読む若い人に興味を持ってもらわなければ扱う意味がありません。
徳間書店入社後、田居さんが携わった雑誌に「月刊アニメージュ」の創刊があった。当時、先輩だったのが現在の鈴木プロデューサーで、「とにかく怒られに怒られて」出版のいろはを教えられたという。
現在は4人所帯となったジブリ出版部も、「平成狸合戦ぽんぽこ」(1994年)制作時に田居さんが配属された当時は、たった一人。故・黒澤明監督と宮崎駿監督の共著である「何が映画か」(93年)などの単行本を「コツコツ作る日々」だった。
―一人で「出版部」というのも大変だったのでは。
田居 大変でしたけど、ノウハウはありましたからね。意外と知られていませんが、ジブリは徳間書店の一事業部なんです。ですから、作品の関連書籍などを作ったりという出版事業には慣れていたんです。鈴木“先輩”もいましたから、分からなかったら聞けばいいやって(笑)。
――編集者になろうと思ったきっかけは。
田居 小さい頃から、岩波書店の児童文学全集などを読みあさって育った本好き。本とコーヒーがあればそれでOK、という日々をずっと過ごしてきました。早い話が、私には本しかないんです。ですから、今、こういう仕事ができているのは幸福ですね。
――活字離れが叫ばれて久しいですが、かつての田居さんのような子どもが減ってきているのはなぜなんでしょう。
田居 アニメーションスタジオにいてこんなこと言うのも何ですけど、やっぱり映像の力が圧倒的だからでしょう。親にしてみれば、絵本を読み聞かせるより、アニメーションを見せておく方が楽ですから。だからこそ、ジブリが本を作り続けていくことは意味があるんだと思います。
――最近は、「戦後派」と呼ばれた作家、故・堀田善衞さんの著作を復刊したことで話題になりました。
田居 宮崎監督と鈴木プロデューサーが以前から堀田さんを敬愛し、親交があったことで、復刊の話が持ち上がりました。堀田さんというのは、宮崎監督が判断に困った時の指針にしている方なんですね。若い人のなかには、堀田さんを知らない人もいると思いますが、手にとって読んでもらえれば、ジブリがなぜ今、堀田さんの著作を復刊したのかを分かっていただけると思います。
――初めて堀田さんの本を読む人にお薦めの順番はありますか。
田居 復刊された3冊の中では、まず、「時代と人間」から入るのがいいと思います。NHKの番組で行った講議がもとになっているので、言葉も平易です。その後、「路上の人」「聖者の行進」、と続くのが読みやすいでしょう。
――「熱風」次号のテーマは。
田居 「どこへ行く、日本の宇宙開発」です。H2Aロケットの打ち上げ失敗があったことで、宇宙開発について様々な意見があることが分かりました。大きな疑問を持っている人もいれば、強く推進すべきだという人もいる。私個人でいえば、そもそも宇宙開発がどういうものなのか分からない。そうやって考えていくと、ロケット一つ作るのにどれだけの予算が使われているのかといった素朴な疑問も出てきて。特集では、「国産ロケットはなぜ墜ちるのか」の著者であるジャーナリストの松浦晋也さんや、SF作家の小川一水さんなどに執筆していただく予定です。
――今後作っていきたい本は。
田居 今、書店に行くと、たくさんの本が並んでいます。毎年7万点もの本が出版されていますが、一方で残っていく本はとても少ない。売れるということも大切ですが、「残っていく本であるかどうか」ということを大切にしていきたいと思っています。
田居さんから伝わってくるのは、本への強い愛情だ。この愛情によって、田居さんが、そしてジブリ出版部が作っていく「残っていく本」は、アニメーション同様、ジブリの大切な“作品”となっていくことだろう。(了)