カームラサンの奥之院興廃記

好きな音楽のこと、惹かれる短歌のことなどを、気の向くままに綴っていきます。

別れの挨拶。

2013-03-28 16:14:44 | Weblog
ボリース・パステルナークといえば、ポール・ボウルズなどと同様に、小説、詩などの文学作品だけでなく、本格的な作曲による音楽作品も残していることが知られているが、残念ながら実際の音を聴く機会にこれまで与ったことはない。その名前は、二十歳ぐらいのときに初めて手にした小説『ドクトル・ジバゴ』(新潮文庫)の強烈で圧倒的な読書体験を通じてのみ、その素晴らしい作品の作者として強烈にインプットされている。だから、今春、未知谷から北大の工藤正廣先生による新訳『ドクトル・ジヴァゴ』が出されたことはまことに嬉しい。今朝は高松から家に帰着してすぐ、ポストに知人からの引っ越してゆくにあたっての丁寧で心の籠った挨拶状を見つけて、寂しさと同時にそうだ、自分も徐々にしなければ、と思い出し、昼間、この春の別れの挨拶の手始めとしてこれまで非常にお世話になった何軒かの食堂のご主人たちを訪ねてしばらく懇ろに話しをしたあと、近くの生協ブックセンターに立ち寄り、いつもの癖で数多ある書棚を渉猟中、たまたま工藤先生の『ドクトル・ジヴァゴ』の背表紙を見つけた。おもわず狂喜乱舞したい衝動に駆られた。それもこれも一抹の寂しさの裏返しだったのかもしれない。
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