【エッセイ】
史書『ブルネグロ年代記』によれば、その日、老齢のブルネグロ飛行男爵は、飛行艇を操作してゐて自分のお城の西塔から誤つて墜落。二〇〇年もののブルネグロ家伝来の飛行艇は直ちに修理に回され、老飛行男爵はベッドの中から周囲に隠退を告げられたといふ。
【短歌五首】
タイトル:西塔墜落事件余聞~猫舌~
ブルネグロ猫らは二枚の舌を持つ ひとつは行燈油(あぶら)を掬ひ取る極上舌(した)
飛行艇乗りは飛行油(あぶら)掬ひ用匙としてひとつの「猫舌」持つのが掟
男爵の「猫舌(した)」西塔に失はれしこと お城の数人にひそと告げらる
猫舌狩(したが)りは夜刻の底ひなる闇の中 飛行艇修理係の抜き足差し足
ブルネグロ猫の親分背をふるはす(今宵は妙に尿(ゆば)りたくなし)