モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

燃えてしまってもよいもの

2023-01-13 20:05:00 | 学生


健一郎 高3 『私の宝物』 油彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは学生クラス・健一郎の油彩作品です。こちらは市美術展への出品作品となります。

海底に沈む金庫の周りは赤々と燃え盛っており、その中にはスマートフォンや金の腕時計などが埋もれています。海面から差し込む光は天使の梯子の様に美しく、まるで天国と地獄の様な対比が面白い構図ですね。
描き初めは絵の具をたっぷりと盛り、そこから引っ掻き傷を付けたりしてかなりマチエールで遊びました。よく見るとシワの様な凸凹があり、金庫のボディに錆が浮いている様に見えますね。その金庫のダイヤルはボール紙を何枚も重ねて貼って作っているので、本当にダイヤルを回して扉を開けられるような気がしてきます。この金庫の中身は一体何なのでしょうか?誰の手も届かないような深海に、燃え盛る炎の中で金庫が守っている物とは?燃えている金の腕時計からはお金・富・財産といったものや時間などを連想させます。スマートフォンは世に溢れる情報や他者との繋がりであったり、科学技術の象徴でしょうか。作者にとって、それらは燃えて灰になってしまっても構わないものであり、それ以上に大切なものを金庫に入れて守っているのでしょう。金庫に入れているあたり、中身を守っているというよりも秘密にしたい事を厳重に隠している、というようにも思えていきます。鑑賞する人によって、金庫の中身は全く違うものになるのでしょうね。

これまでは風景の写真を元に制作していましたが、今回は自身で選んだモチーフを組み合わせて架空の風景を描きました。昨年の市美術展では審査員からの講評で「テーマ選択に知的さを感じさせる。」と言われておりましたが、今回の作品でもそれが現れていますね。鑑賞する者に、作品を考察する知的な楽しさを与えてくれる1枚だと思います。

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絵に入り込むような感覚

2023-01-12 21:30:44 | 学生


明日菜 中2 『苦しさの中で見上げれば』 油彩

早起きが出来なくなってしまいました。布団の中から出られないマユカです!本日は市美術展へ出品する、明日菜の作品をご紹介します。

まるで見ている私たちが沈んで行っているかのような視点で、大胆な構図がとても目を惹く一枚。プールの底へと沈んでいく、明日菜が昔、体験した記憶を幻想的に描き上げました。
水中での視点を描くために魚眼レンズのように大きく歪ませたパースに苦戦しつつも、丁寧に下書きをし、じっくりと塗り進めたため、不自然さは感じません。手前と奥の関係がしっかりと伝わります。水の深さによって青の濃さを変化させているのも良いですね。画面全体が青系統の色で統一されているところを、黄みがかった肌色が抑え、メリハリを生み出しているあたり、何を描くかのラフスケッチの時点で、色彩のことも考えて構図やモチーフの位置を決めていることが伺えます。

そしてなんといっても光の使い方がとても上手です!
水底から見上げた水面には差し込んだ太陽光がまっすぐと水中を照らし、水の中であるのに大空を見上げているようにも見えます。きらきらとした泡は、光に近づいていくにつれてシャボン玉のようにも見えてきますね。
映画のワンシーンのような光の使い方をしていますが、一番いいな、と思うのは腕や足に当たる光でしょうか。縦画面の絵というものは、下の方に濃く暗い色を使ってしまうと、画面全体の雰囲気が重く、暗い印象を与えてしまうのですが、明日菜は色味の明るい腕を下の方へ配置し、更に光を当てることで、下画面を重くせずに、水の深さを表現することが出来ていますね。絵の中の状況や環境をしっかりと考えて描いていることが分かる、水面の揺らぎを感じる光と影。これがあるのとないのとでは、絵の見やすさが段違いです。自然な光の当たり方で描写できているからこそ、見ていて違和感を抱かない、スッと入り込んでくるような作品になったのだと思います。

今回明日菜が描いた作品には強いパースがついていましたが、こういった歪みは、アオリやフカンの視点で構図を作ると迫力が出るように、歪ませることで作品を見ている側が感情移入しやすく、まるで自分がその光景を見ている、もしくは体験しているかのような気持ちになることが出来ます。景色を描く際にあえて構図を歪ませて描いてみるのもいいかもしれませんね。

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描きどころをつくる

2023-01-11 23:59:26 | 学生


一志 高1 『赤』 油彩

あけましておめでとうございます!初詣に行きそびれました、ナツメです。今日は火曜学生クラスより、市美術展に出品する一志の作品をご紹介します!

食卓に並ぶのは暗い赤色一色に統一された花や果物。なんと言っても印象的なのは大胆な色使いですね!パッと見た時には白と赤のみで構成されているように見えますが、さくらんぼのヘタの部分で黄緑色を入れていたり、白も皿は若干黄みがかった色なのに対して布の方は逆に青っぽくと実は補色の関係を上手く使っています。ヘタの部分を指で隠すだけでも随分と味気ない画面になってしまいますし、白も似たような色相から選ばれていればもっとな絵になっていたでしょう。これだけコンセプチュアルに白と赤の2色をメインに置いている中で、どれだけ表現の幅を広げることができるか、試行錯誤したのが伝わってきます。

描写に関しても果物の瑞々しさやごろごろとしたボリューム感をはじめ、どのモチーフからも重量や温度感を感じられるほど質感の表現が素晴らしいですね!相当の観察力がないとここまでの描写は出来ません。カトラリーの映り込みや反射なども惚れ惚れしてしまいますね。きっとすごく楽しんで描いたんだろうなと想像できます。デッサンしている受験生によくかける言葉の一つに、「楽しんで描け!」というのがあります。「描いていて楽しい場所=自分がこだわりを持って描ける場所」をひとつ作るだけでもその絵に対するモチベーションがぐっと上がりますし、見ている側にもそのこだわりは伝わります。その点でも今回の一志の作品は隅々までずっと見ていたくなるような魅力を感じますね!皆さんも自分の絵に対してちょっとイマイチだなと感じたら、好きな部分やこだわりを持って描ける部分を作ってみると一気に見え方が変わりますよ!

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静と盛

2023-01-10 23:58:41 | 学生


月咲 中2 『旅の日の思い出』 油彩

年末年始で崩れた曜日感覚が未だに戻らず困っています、ホノカです。
今回のブログは学生クラスより市美術展へ出品の月咲の油絵のご紹介です。風情のある日本家屋を描いたこちらの作品。渋い色でまとめられた建物と、鮮やかな木々の緑が印象的ですね。

左右対称でかっちりとしたイメージになりがちな正面からの構図ですが、木が左右非対称に置かれていることで純粋な建物の紹介ではなく景色を描いた作品になっています。また、木は前後関係を示すことにも利用されており、手前・中間・奥と、建物の正面からのみでは伝わりづらい立体感を表現することにも一役買っています。
月咲本人に今回の油絵について聞いたところ、「描いた建物は善光寺の近くにあるなんか普通の家」「建物の影は付けるのが難しかった、あと油絵で日本の建物を描くのが意外と大変だった」とのこと。
たしかに本人も言っていただけあり、建物の白い壁面を見ると細々と描かれた影があります。上の方の影に比べると、下の方にある影がより青く暗いことで、同じ質感の壁でも空に近い壁面、地面に近い壁面という位置の違いが感じられます。また、建物へ続く道を見てみると少し土の色が透けたような砂利の道や、白んだ空に合わせて白く明るくなる瓦、木は手前と奥で葉の細かさも変わっている部分などなど、色の重なりを生かした部分や点描のように細かく描くことなど、過去の油絵での経験が生きている所も垣間見えますね。

月咲の油絵はこれまでも、とっても真面目に細かく色を変えながら点描している部分が個人的に好きなポイントなのですが、今回の作品でも家屋を中心にその特徴が出ていますね。
ただこの作品、完成するまでに超時間がかかりました!彼女も中学生時代の私と同じく、労力がお喋りに9割、作業に1割という配分。繊細に作業を進めていく油絵とは正反対にかしましくしてしまうのも分かりますが、お喋りしながらも沢山手を動かせるようになってほしいと思います!

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綺麗なアトリエ

2023-01-06 19:13:10 | お知らせ

冬休み中、大工さんに壁をきれいに塗り替えてもらいました!ワックスで床もピカピカ!(いやだって、今年30周年記念だと思い込んでいたんで!笑)
ペンキを塗り替えるだけでなく、新しい飾り棚を付けたり、油絵を掛ける為の柱?を付けてもらったり、小学生が蹴りを入れて穴が開いていた場所を直してもらいました。(しかしこんなに何十回も壁に穴が開く絵画教室ってある?普通美術の授業って暴れることなくない?校内暴力?いや暴力教師がいるんだった。)
どうぞ皆さま、新年は美しい教室で制作にいそしんでくださいませ。

通常ブログの再開は1月10日(火)からとさせて頂き、明日から3連休はブログもお休みさせて頂きます。

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自慢のアシスタントスタッフ

2023-01-05 17:02:18 | スタッフ講師

オバラです。ここ10年くらいはどんなに人手が足りなくても、アシスタントに外部の学生を使っていません。自給自足?自産自消?ミオスで育った子に手伝ってもらっています。
小さい時から嫌というほど私に激怒され続けている子達なので、常に頭を使う癖がついていると感じます。
どうです、この年末年始のご挨拶!?決して勉強ができる訳ではない人達が、こんなに考えて働いているんですよ。
恐ろしい上司の命令を鵜吞みにせず、自分なりの解釈・判断をしてから動いている。そして自分の行動の理由もちゃんと説明してくれる。
素晴らしい!感動してしまいました。どこに出しても恥ずかしくない!

と、いつも怒ってばかりなので、ここで褒めさせて頂きました。失礼しました。

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相互理解を深め

2023-01-04 12:48:21 | スタッフ講師


小原 京美 アトリエ・ミオス代表

現代美術の存在意義は非日常を示唆する(いつまでも当然そこに存在すると思われている常識の根底を揺るがす)こと。鑑賞者は作品を目の前にして「自分なりの答えを見付けられるか?」が問われている。答えが外れる心配は無用であり、見なかった事にしたり、考えることを放棄しなければ結構です。誰かと一緒に体験したら、相手が感じたことが新たな気付きに発展し、思いもよらない答えが見つけられるかもしれません。そんな対話・挑戦の楽しみを知ったら、ジェットコースターですら『敷かれたレール』を走っているだけの、刺激のないものに感じるでしょう。

一旦話を置いておきます。『多様性』が叫ばれる中、今なお『変わっていること』は敬遠されます。自分の基準が普通で当たり前と思っているから、違う人間を寛容しづらい。だから『違い』は、時に他者と衝突を生む原因になるのでしょう。排除するのではなく、存在を受け入れるのが多様性。でもマイノリティを認める→許容されるの一方通行にならぬようには気を付けて。

ジェットコースターの進路が急に変わることはありませんが、世の中は突然変わります。変わることは当然だし、変わっている人がいるのも当たり前になのに、変化に気付かない・見ない振りをし続けて来たツケを払うような形で突如出現したコロナ。日常が大きく変わった世界、予測不可能な未来を『楽しむ姿勢』を持てるかどうかを試されている気がしてなりませんが、その感覚は現代美術や、自分と違う考え方を持つ人との対峙と良く似ていると感じます。変化に対応する力は、一方方向もしくは一つの解決策しか持たない場合、脆い。想定外のことに対し、どんなことを意識し、大切にするか、自分だけの答えを出す訓練が必要でしょう。

教える側と勉強する側、与える→与えられるが一方通行の関係性で成り立つ教育現場では、独創性のある答えを出すことができません。教師だけが正しい答えを持っていて、それを一方的に開示するのではなく『一緒に体験し、影響を受け合い、互いをリスペクトしながら、相互作用を楽しむ』形が理想です。
当校では長期的な交流を通じ、信頼関係を育む中で、そのような可能性を見出してきました。他者・世の中への関心から、これまでとは違うやり方を考えたり挑戦したりするために必要な『変化に対応する力』を得、不安定で不確実な未来を築く。このことに深い所で自覚的でありながら、今年も確かな歩みを続けて参りたいと思います。

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等身大の自分を探してみる

2023-01-03 16:56:57 | スタッフ講師


岩田俊彦 学生・大人クラス担当

「はるのあしおと」

今朝も鏡もろくに見ないまま家を出た。
眼前の錆びついたトタン屋根のアパートは、今日も何とか体をなしている。
少し行くと、薬屋の前に置いてある、かつては橙色であったと認識すらできなくなってしまった象のマスコットに、昨日と変わらぬデフォルトの笑顔で朝の挨拶をされた。
俺の口からは、あくびともとれるような溜息がこぼれ落ち、道の上をころころと転がって、側溝の中へと消えた。
祠の傍らの雑木林、修復不可能なほどコンクリートがひび割れてしまったボタン工場。
駅まで続く日常を歩いていると、モノトーンの世界を少しでも鮮やかに彩ろうとする何かがこの曇りきった両目にさえ微かに映り込んでくるのが分かった。

はるのあしおと か。

将来の希望も、過去の反省もない、ただやり過ごすだけの毎日。
一昨日のニュースキャスターがまるで流行りを先取りしたかのような口調で視聴者の皆様にお伝えしていた、もはや使い古されたその言葉が一筋の光に見えた。

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新年明けましておめでとうございます。

上記は、2022年年末にGINZA POLA MUSEUM ANNEXにて開催されたSPRING IS AROUND THE CORNER展 に寄せた一文です。
「春」をテーマに自分の日常や身の回りの風景をヒントに書いたこちらの文章をベースにしながら、実際の作品、ドローイング制作へと繋げていきました。
大きいテーマやドラマティックな風景等でなくても、アスファルトの割れ目から咲く一輪のタンポポのような、ほんの些細な日常に結構多くの絵になる題材が横たわっているものです。

灯台下暗しという言葉があるように、皆さん今年は、もう一度身の回りを見渡して、今まで気づきもしなかった、すぐそこにある等身大の自分を見つけて絵にしてみては如何でしょう?

本年もどうぞ宜しくお願いします!

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絵画教室という場所

2023-01-02 16:02:39 | スタッフ講師


大竹加余子 小学校受験・幼児・小学生・学生・大人クラス担当

ミオスへは生徒として小学生の頃から美大入学まで通い、中学卒業後からはミオスでアルバイトを続け、もう今年がミオス何年目なのかも分からなくなってきました大竹です。
大学卒業した後は自分の絵画教室を開校し、今年で3年目になります。ミオスで小学校受験、幼児から小学生、学生・大人クラスまで担当させて頂けた事で、経験をそのまま活かして仕事をはじめる事ができました。

最近、学校とも会社とも家とも違うコミュニティというのは、どの年代の人にとっても必要なものだと感じます。同好の人たちが集まり、毎日ではなく週に一度顔を合わせる場所というのは、決して珍しいものではありませんが、誰しもが持っている訳ではありません。学校の友達とは話せない事をミオスで話したり、職場では会えないタイプの人と出会ったり、家の人とは出来ない事をしたり…。ただ絵を習うだけではなく、そういった新しい人との繋がりを作ったり、自分の為の制作をする場所という役割を持っています。
特に小学生にとっては家と学校が生きる世界の殆どを占めているでしょうから、そのどちらでもない場所というものは幼少期において重要なものと感じております。1ヶ月というある種締め切りのある中で、同年代の子と同じものを制作していく。定期的に何か目標を設け、それを達成していくという経験は良い刺激となりますし、みんなと同じ作り方を教わったとしても、出来上がるものは人それぞれ違います。他人と違う部分は、即ち自分の個性とも言えます。制作の中で、自分自身はどんな人間なのか?何が好きで何が苦手なのか?他の人はどんな色を使ってどんな風に作っているのか?自分について、他人についても気付いて知っていく事ができるでしょう。

私自身も小学生〜学生の頃はミオスへ生徒として通い、その後は講師として通ったお蔭で、絵画教室でしか出来ない経験と思い出を作り、それが続いていって今の自分に繋がっていると感じます。創作活動を通じてここでしか学べない事は何か?与えられるものは何なのか?2023年はこれらを模索していき、「ミオスに通っていて良かった!」と思って貰えるような時間を作っていきたいと思います。
2023年もどうぞよろしくお願いいたします!

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29年目を迎えます

2023-01-01 20:59:36 | 大人 パステル・色鉛筆・他


瀬戸 パステル

謹んで新春をお祝い申し上げます。
旧年中は大変お世話になり、誠にありがとうございました。

本年も、生徒様により良い制作の場を提供できますよう、スタッフ一同、精一杯サービスの向上に努めて参ります。すでに30周年の気概を前倒ししておりますので、気持ちを新たにして真剣に取り組む所存でございます。

変わらぬ御指導を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
皆さまのこの一年が、祝福された時となりますように。

令和五年 元旦  アトリエ・ミオス代表 小原 京美

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