秦野 アクリル
大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、秦野さんの油彩作品です。ビリヤード台に腰掛けキューを持つ女性。ファッション雑誌からピックアップされて描かれました。キャンバスボードに描かれているので、油絵のような印象も感じます。まるで黄金にも見える黄色の背景に、赤い洋服が映えて鮮やかに見えてきます。黄金と女性の組み合わせは、どこかクリムトを思わせる華やかさですね。
単調な黄色で塗り潰すのではなく、筆の跡を残したり、右下に人物の影を入れています。これにより、一層人物の存在感が増していっているのでしょう。
構図を見てみると、少し左に寄せて描かれていますが、紙のど真ん中に顔が来る様にしてしまうと、動きのないつまらない構図になってしまいます。また女性の顔が右を向いているので、右側に空間の余裕ができる様左側に寄せて描かれているのでしょう。
服のシワやその下にある身体までよく意識して描かれていますね。流石の描写力です。服の素材やポーズによって、シワのでき方は変わってきます。人物を描いても何だか薄っぺらくなってしまうという方は、服のシワ・その下にある身体を意識して描いてみると良いでしょう。
秦野さんは青を活かした風景が印象的でしたが、こうした情熱的な雰囲気の作品も素敵ですね。この女性が内に秘める闘争心が静かに漏れ出しているかの様です。目には見えない心の内や温度を感じさせる1枚だと思います。