モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

小粒の山

2024-06-06 23:14:08 | 大人 水彩


木佐貫 透明水彩

マユカです!今回は木佐貫さんの作品をご紹介したいと思います!

山盛りのいちご、シンプルながら目を惹くモチーフになっており、木の机や差し色の緑がいちごの赤を際立たせています。差し込む光は自然で優しい春の陽気を感じさせ、水彩の雰囲気にとても合っていてなんだかほっこりとしますね。ふんわりとした画材だからこそ、つやつやとしたいちごの瑞々しさを表現するのに苦労されました。

全体的にしっかりと立体感が付いており、淡い画材でも臆さずに濃く、強いコントラストの色彩を乗せているために、しっかりと光に沿ったゴロっとしたいちごの感じが出ています。一粒一粒の質感は勿論ですが、この粒を「個」として見るか、「塊」として見るかで絵の印象というのは大きく変わってきます。例えばブドウなどは、房に付いている一粒一粒を一個ずつ描いていると、光の方向が分からなくなってしまったり、立体感がなくなりイラストのようになってしまったりと、自然な感じを出すことが難しくなってしまいます。これが「個」の描き方ですね。そうならないために、ブドウの房の描き始めは5角形の角錐を横にしたようなアタリを描き、ざっくりとした全体の陰影をつけてから、粒の形を追っていく…というような描き方をします。これが「塊」の描き方です。

今回の木佐貫さんの水彩画は「塊」として見ることが出来ているので、上から見た構図でありながら、山のように積まれたいちごを感じるのでしょう。また、手前と奥の描き分けもいいですね!手前は木目までしっかり描写し、光が当たっている場所と影になっている場所でいちごの種の書き分けまでする徹底ぶり。しかし奥の方は木目は光で見えないようになっている上、いちごにも陰影をつけるくらいであとはぼやかされています。こうすることで遠近感を強く演出する効果が生まれており、画面にメリハリがついてとても見やすくなりました。まるで写真のようなピントの合わせ方ですね。

細かく描き込むだけが良いというわけではなく、本当に見せたい場所、視線を向けてほしい場所を重点的に描き、周囲はあえて描かない選択をすることで意図的にピントを作り出し、より見やすく、より伝わりやすい画面にできます。主役にスポットライトが当たる絵はやはり、見ていて心地がいいものです。

コメント
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