駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

五か月も先のことはわからない?

2020年06月10日 | 世の中

             

 

 アメリカ大統領選挙の予想を聞かれて、そんな五ヶ月も先のことは分からないという外交専門家やアメリカ政治の研究者がいる。確かに預言者ではないから当てるのは難しいかもしれない。しかしただ分からないとか予想など意味がないなどと答えるのでは専門家として不誠実な気がする。確かに当たったから高評価外れたから低評価などという素人の単純な反応には抵抗があると思うが、分からないにも程度や中身があるはずで正面から答えるのが本当の評論家と思う。

 内科臨床医は病気の知識は浅い部分も多いが範囲は広いので、病気のことを聞かれて分からないと答えることはない。勿論、うるさいあるいはしつこい患者さんと感じた場合にはそう答える医師もいるかも知れないが、普通は専門でない分野のことには大まかなに答え、必要と判断すれば専門医を紹介するものだ。病気は誰しも自分や家族の経験があるから、患者さんの方が当たっていることも百に一つ二つある。政治のことも誰しもある程度の知識や関心があるから、一般人の方が専門家よりも当たっていることが五十に一二つあるだろう。それでも、まぐれ当たり?に鼻白むことなく、専門的な見解を示すのが真っ当な評論家というものだろう。

 一部の専門家が当たり外れのような質問を嫌う背景には、素人は黒白で判断しがちで困るという感覚がありそうだ。それは確かで、新型コロナの第二波がいつ来るかどのような大きさか、アメリカ大統領選挙はバイデンで決まりかなどという質問には一言では答えられない。専門的な見解には多言を要し、その内容は黒白ではなく黒に近い灰色、あるいは薄いねずみ色、場合によってはシマウマのようになることが多い。

 恩師は検査結果や診断を一言で答えるのを諫められた。曖昧なようでも幅のある方が正しい理解のことが多く正診に辿り着けるのだ。

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