駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

病気自慢?

2020年06月05日 | 診療

              

 

 受付がガヤガヤしたと思ったら日に焼けたお爺さんの見本ような二人が診察室に入ってきた。なんでも暑い中頑張って桃の袋かけをしていたら右足にこむらが掛かって動けなくなった。弟を呼んで車で連れてきて貰ったという。兄は八十三才、弟は八十才、皺の中に顔がある。兄の方が右足にこむらが掛かりなんだかピリピリした、脳梗塞ではないかという。それにしては言語明瞭歩行順調で、頭痛目眩もなく血圧も130/72/66と良好だ。動きは悪くないが一時的にびりびり感じたという。過去に軽い脳梗塞の既往があるので慎重に神経学的所見を取るが異常は認められない。

 どうだね先生、今日は血液サラサラの薬を四粒飲んだ方がよかないかねと聞くので、駄目そんなことはしないで、いつもと同じ二粒でいいと注意する。黙って見ていた弟が、わしも不整脈があるんで血液サラサラの薬を飲んでいると言い出す。なんだヨシオもか、わしは血圧も高いんじゃと兄が割って入る。この前の脳梗塞の時には救急車にも乗った。いい年をして妙なところで兄貴風を吹かせる。抗血小板剤と抗凝固剤は同じ血液サラサラでも一寸違うんだがと思ったが、説明してもこんぐらかるのでああそうですかと聞き流した。

 一過性脳虚血発作もあるので100%脳血管障害を否定できるわけではないが恐らく無理な姿勢を続けたせいだろう。99%大丈夫と判断したので、心配なものではない畑仕事を頑張りすぎたせいだと思う、今日は家でお茶を飲んでゆっくりするように、変わったことがあったら何時でも電話してくださいと話すと安心したせいか元気に並んで帰って行った。ここで残る1%のリスクを掛かり付け医が取るのは妥当と思う。

コメント
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