年の終わりに犬が歩いて思いがけぬ棒に二つ当たった。
一つ目の棒は映画。新聞の映画評論で藤原帰一さんが「私は、マリア・カラス」を高く評価されているのを読んだ。これは見なくてはと昨日有楽町の東宝シネマで見てきた。素晴らしい作品だった。マリアカラスはこんなに魅力ある優れたデイーバ、愛らしくひたむきな女性だったのかと感激した。その歌声は魂に響いた。この映画が素晴らしいのはとりもなおさずカラスが素晴らしい人だったからだ。この映画を教えてくれ、歳の暮れを気持ち良いものにしてくれた藤原さんにお礼を申し上げておきたい。
もう一つの棒は考えさせられる本だ。「アメリカ」橋爪大三郎と大沢真幸、このお二人はいつも目を開かされる評論を書かれる。こうしたアメリカ理解があるのだと何か所も目から鱗が落ちる指摘、解釈があった。成程とアメリカだけなく日本の理解も深まったように思う。ただ、「アメリカ」に書かれているアメリカは世に流れる馴染んだアメリカ像と随分かけ離れている。一体何故と不思議な気がした。多くの方にこの本を読んでいただき、日米関係を見直すよすがにして欲しいと思った。