駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

薬価政策の謎

2009年04月02日 | 医療
 国民(かなりの部分はマスコミ主導)が医療を見る目はこの10年、金儲け医者批判から過重労働医師理解へと急旋回してきた。その中で厚労省は一貫して医療費増加を抑える努力(おそらく財務省指導)をしてきている。
 医療費抑制で大きな部分を占め実績があるのは、薬価(薬の値段)の切り下げである。高血圧や糖尿病の薬から膏薬まで、全ての薬価は国の管理下にある。ついでに申し上げれば医療行為の値段も一律全て国が決めている。
 厚労省はこの国が決める薬価を下げることで公的医療費出費をいくらかづつ減らし、それを原資に増やさざるを得ない新しい医療行為などに資金を回してきた。
 こうした薬価の切り下げよりも劇的に医療費削減に効果があるのが医師の処方する薬を元々先発品よりも非常に安い後発品、所謂ジェネリック、に切り替えることなのだ。上場企業の一流メーカーの先発品に比して中小メーカーの後発品は概ね半値、驚くべきことに7割安の物もあり、なのだ。
 簡単に解説すると先発品というのは新薬で特許が切れた後も比較的高価となっている大メーカーの薬のこと。後発品というのは特許が切れた薬を中小メーカーが製造している薬剤製品で開発費宣伝費などがかからないため半値程度の薬価になっている。
 後発品(ジェネリック)を使いなさいというあの手この手の厚労省の指導に拘わらず、意外に伸び悩んでいるのが後発品(ジェネリック)なのだ。なぜかと言えばジェネリック薬品を好まない医師が多いからだ。これは決して先発品を使用した方が儲かるということではない(実際は後発品、ジェネリック、を使用した方が僅かに利潤があがるだろう)。正直に言えば後発品(ジェネリック)の効果に疑問を持っている医師が多いからだ。一般の方が考えても、例えば同じ薬とされる高血圧の薬Aがトップメーカー品の他に十種類も出ていてその値段にトップメーカー品の3割から7割安などという幅があれば、何でこんなに安くしかも値段が違うのだろうと訝るのは当然とご理解頂けるだろう。厚労省の言い分は餡(成分の薬)は同じということなのだが、はっきり言ってどら焼き(薬剤製品)は餡だけで決まらない、皮(カプセルや錠剤の性状)も大事なのだ。
 さてどうすればいいだろう。答えは簡単で二つある。一つは医師に薬を製品名で処方させず薬品名で処方させるようにして、調剤薬局で後発品(ジェネリック)を出させる。もうひとつは先発品を後発品(ジェネリック)並に値下げさせる、そうすれば医師も喜んで使用する。
 どちらが良いか、国民によく考えて頂きたい。どちらを選んでも製薬メーカーは大混乱に陥るのは確かだが、普通に考えれば医師に信頼性の高い先発品を後発品(ジェネリック)並に値下げする方策が良いとすると思う。
 ここで医療経済学者と厚労省の言い分が違ってくる。学者は一流メーカーには後発品並みに薬価を下げても耐えられる体力があるとするのに対し、厚労省はそんな体力はないと大企業に優しいのだ。果たしてどちらが本当なのだろう。
コメント (2)
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