玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*元日の散歩

2010年01月05日 | 捨て猫の独り言

 おだやかな元日だった。ようやく昼ごろになって、歩いて20分ほどの寺と神社まで散歩する。腹ごなしと気分転換が主な目的なので厳粛な気分とは程遠く、これを初詣というのは気がひける。寺と神社とでは私は寺の方が気に入っている。小川寺は臨済宗円覚寺派のお寺で山門には二体の巨大な仁王像が鎮座する。鐘楼がある境内は立派に整えられ裏の庭園も見逃せない。かなり広い墓地を抱えているのでこれだけの構えができるのだろう。墓地からは高圧鉄塔の電線のはるか向こうに雪をいただいた富士山を望むことができた。

 寺の本堂の賽銭箱の隣に、薄くて手のひらサイズの大きさの季刊のパンフレット「円覚」が置かれている。その中に寅年ということでつぎのような記事があった。『中国の諺に「虎の威を借る狐」というのがある。虎に捕らえられた狐が虎に向かって言った。実は天の神さまから、百獣の長になれと私は命じられている。私を食べると神さまに叛くことになろう。疑うならば、しばらく私の後に付いておいでと言った。虎が狐に付いていくと、森の動物たちは後ろの虎を見て、森の奥深く逃げてしまった。これが「虎の威を借る狐」である。』 この物語を読んでこれまでの諺の意味が変わってしまった。私は命がけの狐に深く同情し、連帯感を覚えるようになったのだ。

 青梅街道をはさんで寺のすぐ向かい側に小平神明宮がある。寺では参拝者をちらほら見かけるだけで僧侶の姿を見ることはない。寺の静寂とは好対照に毎年のように神社は黒山の人だかりである。社殿から50mほどの鳥居までぎっしり四列に並んで参拝待ちをしている。並んでいる人たちの忍耐強さには驚かされる。神主をはじめ関係者は総出で対応している様子だ。あさましいことに私は以前この神社で七五三の祝いをしてもらった時の納得いかない出費を思い出していた。

 例年通り長蛇の列をしり目に車道を通って駐車場の方から本殿前の広場に直行した。境内の片隅では甘酒が無料で振舞われている。私の狙いは甘酒である。すこし並んで待ち、温かい甘酒をいただき広場の焚火にあたりながら、賽銭を投じ鈴を鳴らして参拝する人たちの姿を眺めた。腰を90度に折り曲げる、右の掌を左に対して少し引いて打つ、二拝二拍手一拝が作法だったかなどと考えながら見物する。大部分の人は気分も落ち着かず作法通りなんかやっていられないようだ。神社まで出向いて参拝しない私の行為は神に対して失礼だろうが、これでいいのだという気持ちの方が強い。

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