「荒れ野の40年」といわれる、西ドイツのヴァイツゼッカー大統領の演説全文を岩波ブックレットで読んだ。私は皆さんに遅れることなんと20年ということになる。彼は1984年から1994年まで2期にわたりドイツ連邦共和国の大統領であった。特に任期の後半は統一ドイツの初代大統領をつとめることになった。アメリカなどと違って大統領の権限は小さい。大統領の権威の所在が権限よりもむしろ語るべき内容をもっているか否かの演説の影響力にあるとされている。
ヴァイツゼッカーの名前を世界的に著名にしたのは任期の初め1985年5月8日に連邦議会で行った敗戦40周年を記念する演説である。彼は国家元首という立場にありながら、自国がかって犯した罪責を一つ一つ具体的にあげて反省した。その驚くべき率直さが人々の胸を打った。敬虔なプロテスタント・キリスト者としての信仰的背景を見逃すことはできない。この演説が「荒れ野の40年」と呼ばれるようになったのは、演説の終わりの箇所で旧約聖書が引き合いに出されていて、イスラエルの民は約束の地に入って新しい歴史の段階を迎えるまで40年間荒れ野にとどまらねばならないとあることによる。
大統領就任当時の夫婦の写真をみて二人の節度ある笑顔に毛並みの良さと知性を感じて祝福したい気持ちになったのは私ばかりではあるまい。彼は1989年に昭和天皇の葬儀参列1995年に広島原爆慰霊碑に献花等で来日している。戦後60年の今年、ブックレット「〈荒れ野の40年〉以後」が出版された。写真は割烹「いろりの里」の待合室にて。
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