大学生河野實(マコ)と軟骨肉腫に冒された大島みち子(ミコ)との3年間におよぶ文通を書籍化した「愛と死をみつめて」がベストセラーになり、翌年の1964年には吉永小百合と浜田光夫が共演した映画も大ヒットした。この年私は大学受験に失敗して浪人の身だった。あまりにも全国的な話題になりすぎたせいか、私がこの映画を観たのか、観てないのかはっきりしない。
なにしろレコード、映画、テレビドラマその他で「愛と死をみつめて」が繰り返し再生され、稀に見る社会現象となっていた。この年の11月にはケネディ大統領が暗殺されるという衝撃的な事件も起きている。あれからもう60年が経過している。
なぜこのようなことを思い出したのかといえば、昨年のプレミアムシネマでアメリカ映画「ある愛の詩(うた)」を観たことによる。この映画は何度か放映されたと記憶するが、私が最初に観た時はあまりにも寂しげな雪景色の始まりにおもわず観ることを止めたのだった。今回本腰を入れて観て、純愛映画の金字塔という評価に納得することになった。
二つとも難病で死に別れる恋人をテーマにした映画で、「愛と死をみつめて」の6年後に「ある愛の詩」は作られている。軍配を上げるとすれば後者の方にあげたい。なぜなら後者には名家の4世とイタリア移民の娘という家柄の違い、送金が中止されて貧しいながらも幸せな日々、最後は父親との和解など劇的な要素が多く仕込まれている。なにより私が感動したのは、降り積もった雪の中を、くみつほぐれつしながらひたすら二人だけの世界に没入しているシーンだ。これはおそらく人生に一度だけしか訪れることのない瞬間で、それを描き切った稀な映画だと思う。
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