玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*定期購読誌(2)

2021年03月11日 | 捨て猫の独り言

 「週刊金曜日」の連載「ハンセイの記」を遡って読んだ。鈴木邦男は早稲田大学に合格して上京し「生長の家」の寮に住む。朝は4時45分起床、正座して1時間祈る。国旗掲揚、君が代斉唱、皇居遥拝、ラジオ体操、道場の掃除。夜は「生長の家」の書籍の輪読会。修行の激しさに、同期の8人は半分に。でも鈴木は耐えて道場に6年住んだ。彼の大学生活と比べて、自分のそれが無目的で実り少ないものであったことを苦く思い出す。

 鈴木邦男の間口の広さは並ではない。社団法人「共に生きる」の理事長として、麻原彰晃の三女松本麗華さんなどを支援している。鈴木さんしかいないと言われて、和歌山カレー事件では「林真須美さんを支援する会」の代表を引き受けた。京都大学教授の河合潤教授はヒ素鑑定の矛盾を指摘する意見書を裁判所に提出しているという。よど号ハイジャック事件の田中義三との交流もあった。そしてまた大杉栄の故郷新潟の新発田市にもしばしば訪れる。

 

 近くの図書館にあった鈴木の著書、2016年岩波ブックレット「愛国心に気をつけろ」、2009年筑摩新書「右翼は言論の敵か」、1990年アイピーシー「天皇制の論じ方」を読んだ。他にも数えきれないぐらいの著作がある。2014年に河出書房新書から「反逆の作法」という本を出している。タイトルをつけたのは、当時、河出の編集者だった武田砂鉄で、ほどなく独立した武田は「紋切り型社会」(朝日出版社)の出版で賞を受け、売れっ子ライターになる。

 武田砂鉄は、私の散歩コースにある明治学院東村山高等学校を出ている。こういったことでも親近感がわくものだ。武田が「反逆の作法」というタイトルをつけたときに鈴木は驚き、その才能を感じたという。「反逆の作法」なんて言葉は、本文には全く出てこない。その武田の投稿が週刊金曜日の2月26日号に掲載されていた。五輪開催が東京に決まった瞬間に飛び上がる安倍晋三や森喜朗の写真の横に「体を痛めている人が路肩に倒れている。その人に向けて、〈俺たち、これからカラオケに行くんで、歌声を聴いて元気になってくださいよ〉と告げる人たち」とある。

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