玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*反核をめぐって

2023年09月11日 | 捨て猫の独り言

 詩人の鮎川信夫(1920~1986)と吉本隆明(1924~2012)が1982年に対談している。そこでの鮎川の主な発言を記録することにした。いくらか新たな視点を教えてもらったという気がしている。

●核兵器を作ったということはすでに原罪みたいなものなんだよ。人間が知っちゃったことは核兵器を廃絶したところで知識としては存在し続けるんだよ。そういう点で知識というものを軽く見ているね。

●人類の絶滅っていうことを、すぐ誰でも核戦争の結果として言うけど、それは理論的にはおよそありそうもないことを言ってる。ところが今の反核論は人類絶滅論に立っているでしょ。だけどそれだって本当は分からないでしょ。誰もが疑おうとしないことこそ、みんなが正義だと思い込みがちだね。これだけは間違いないということが一番間違ってることがあるんだよ。

●中世には神様なんていうありもしないものをめぐって論争も裁判も起きている。あの神学論争と同じだと思う。反核運動の御本尊は核なんだね。核爆発の実験よりも本当は運搬手段の実験の方がはるかに重要で危険性も高いはずなんですよ。個人の判断で核戦争をはじめるわけないし、会議したうえで決定し遂行していくわけだが、あまりにも不確定要素が大きく、それが核戦争の抑止力になる。

●日本ではなかなか本当の論争は生まれないね。アーギュメントはあっても、それは自分の立場に執したもので、少しでも相手のいうことを吸収して自分の論理で克服するという、いわばディベートの方をやらない。ディベートには立場にとらわれず、相手を少しでも知って吸収して行くという基本的な態度が根本にある。ところが日本人の社会って依然として情緒だけで動いちゃうね。反核にしても実質的な論争を生まないままファーッと終わっちゃうんじゃないか。

コメント
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