松元ヒロは46歳でテレビを離れる。テレビ局から「ちょっとそれは控えて」と忖度が見えてきたと言う。テレビがリスクヘッジやコンプライアンス、ガバナンスなどの屁理屈をつけて彼を敬遠したのだ。このたび故郷の鹿児島テレビが制作した番組をもとに、内容を膨らませて「テレビで会えない芸人」として映画化したという。テレビ側が制作したというのは皮肉な現象だ。
製作スタッフが鹿児島から東京に来て、3、4日はりついて帰ってゆくのくり返し、カミさんは最初は「私を撮んないでね」と言っていたがそのうち油断していろんなことをしゃべるようになった。それがおもしろいんです。僕だけだったらつまんなかったろうなと松元ヒロは話す。内容が膨らんだのはカミさんのおかげのようだ。
鹿児島では1月14日から先行上映されている。東京の初日の1月29日は上映のあと本人、製作スタッフの舞台挨拶があるというのを知って、のこのこ出かけたがチケット完売ですごすご引き返すはめになった。「ポレポレ東中野」はドキュメンタリー映画の聖地と呼ばれているらしい。ポレポレとは「ゆっくりゆっくり」という意味のスワヒリ語だという。映画でカミさんのお顔を拝見出来なかったことが何よりも悔やまれた。
松元ヒロが20年以上演じる「憲法くん」は日本国憲法を人間に見立て、その精神を語る演目だ。井上ひさしが絶賛し、永六輔は「9条を頼む」と言い残した。立川談志に「昔の芸人は、ほかの人が言えないことを代わりに言ってやるやつが芸人だったんだ。お前をきょうから芸人と呼ぶ」と言われた。また新宿・紀伊國屋ホールでソロライブ「ひとり立ち」を年二回開催している。