玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*嘘と真実

2020年04月23日 | 捨て猫の独り言

 つい最近の新聞のおもしろ投書欄にこんなのがあった。高校時代古文の先生いわく「雑草のようにたくましく、どこでも根を張って生きなさい」全校草取りの時、掃除監督の先生いわく「雑草など何の役にも立ちません。一本残らず引き抜きなさい」。2人は同一人物です。(津市・真理は必ずしも一つでない・59歳)

 小針覗宏著「数学の七つの迷信」を読み返した。著者は大学紛争名残りの時代1971年に、40歳になる直前で死去した京都大学教養学部の名物教授である。同じ数学教授の森毅が巻頭言を寄せている。このエッセイ集の中に「矛盾の話」というのがある。その中に「真であると同時に偽である命題」として「真理は存在しない」というのを紹介している。(ハナミズキ、ヒメウツギ、イチリンソウ)

 これが真だとすると命題と矛盾するし、真でないとすると、この命題は本当のことを言っていることになる、つまり真なのだ。これは命題の中で、その命題の真偽を論じてはいけないのにそれをやっているから変なことになる。だから「真理は存在しない」というのは、何を言ったことにもならない。当時この個所に、なにか判然としないものを残しながらもそのままにしていた。最近私はその何年後かに書かれた森毅のつぎの言葉を発見してすこし納得した。(キンラン18日、19日、22日)

 

 「このごろどうも、百パーセントの真実でないと気がすまぬという兆候があるようだ。これはどうも、現実にあわない。情報というものには、かならずノイズがあって、ウソが混入するものだ。だから、嘘も真実もある情報の流れとつきあうほうが、現実的である。危険なのは、嘘があるからではなく、嘘がないと信ずることのほうにある。ぼくの17歳のとき、戦争が終わった。政府にだまされたと大声でわめくおとなたちを、ぼくは軽蔑した。女房にだまされたと町なかでわめく亭主みたいではないか。そして、人民をだまさない政府をつくれ、という声にあきれた。どこにウソですと言いながらウソをつくやつがいるものか。だまされないようにするのは、相手の問題ではなくて自分の問題である」

コメント
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