シングルマザーとしてアトランタに住む娘が自分の子を残して帰国した。娘の今年の日本滞在は10日間だった。行政の上では突如として小平市に三人世帯が出現し9日間で消滅したわけである。それと同時に2人の孫娘は私の世帯に転入し、ほぼ2か月してアトランタへ転出ということになる。3人とも国民健康保険に加入し、教育委員会からは孫娘たちの編入学通知書が交付される。児童手当の支給もある。
孫たちは来日した翌々日から、それぞれ小学5年生4年生として登校した。ハードルが高いのは国語の授業だ。教科書のすべての漢字にルビを振るのは私の仕事になる。電子辞書を引くことが多くなった。例えば、5年生では円柱形はcylinder、多様性はvariety、要約はsummaryなど、難しいと思われる刺激的な言葉が次々に出てくる。算数の計算ドリルは喜んで取り組むのだが、算数の文章題となると手が止まる。
「りり、ひさしぶり!あえてうれしいよ!1ねん前に花火とか虫をつかまえたね。おぼえている?またやりたいね。 りりは絵がじょうずだよね。また、りりがかいたえほしいよ。 あまりあそべないかもしれないけれど、なかよくしてね」これは同じクラスで隣の席にいて、何かと面倒見てくれている4年生のアスカさんがくれた手紙だ。登校2日目だった。彼女は姉のスミレ宛への手紙も書いてくれていた。
毎朝の「お早うございます。お茶をどうぞ」はこれまで通り続いている。お盆でこしらえた簡易祭壇に焼香して手を合わせる。そして昨日のできごとや、今日の予定などを思いつくままに2人が競い合うように言葉にする。横から私が付け足すこともある。何気なく続いているが、そこに何らかの効用があるからだろう。短く自分を振り返る時間なのかもしれない。これはラジオ体操の後に行うことになっている。