オープンギャラリーでは、つぎの節気の前日の午後に展示の入れ替えを行う。鈴木さんから「小寒」の展示終了後すなわち5日に「新年会」をやろうと誘いを受けた。場所は鈴木さん宅の離れで、ここはギャラリーの展示物の作業場になっていて「花のアトリエ」の看板が掲げられている。鈴木さんは手打ちうどんの講師を務めたこともある。鈴木さんが打ったうどんを食べながら玉川上水の歴史や当時の測量技術などについてあれこれ語ろうという。
ところが、ご夫婦とも風邪をひかれてこの計画は延期になり、結果的に10日の小寒の観察会の直後になった。数人には事前にそのことを知らされていたが他の参加者は当日に知る。正午ちかくに観察会が終了すると女性参加者たちは、うどんのお土産を頂いて解散となり、男性陣はアトリエに上がり込んで飲めない人もふくめた酒盛りが始まった。
庭先では鈴木夫人が卓上カセットコンロでナズナのテンプラを揚げる。鈴木さんは、うどんをゆで上げて母屋から運び込むのにいそがしい。「こんなに大勢になるとは思いませんでした」と私が言うと、「俺もそうなんだよ」と鈴木さんは涼しい顔だ。仕込んであったものを4時半に起きて捏ねあげたという。鈴木さんが席に戻って、まもなくして少人数になったころに夫人もアトリエに姿を見せた。今回は玉川上水の歴史ではなく、自然環境保護が話題の中心だった。
翌日は秩父市にあるKさん宅を夫婦で訪ねた。私にとっては連日の新年会となった。私の前の前の職場での同僚である。私の弟と同じ年のKさんは埼玉県の公立高校の校長を6年勤めあげて退職した。子供たちが幼いころにKさん宅に家族で泊り、荒川の河原でキャンプをしたこともある。私は彼の結婚式に初めて秩父を訪れて以来この土地が大好きである。秩父は毎日のように花火があがりどこかでお祭りをやっているというような印象がある。Kさん夫婦には吉田椋神社の龍勢まつり以来5年ぶりの再会だ。昼前に西武秩父駅まで迎えに来てもらい、四人で「秩父錦」をいただきながら時は過ぎた。埼玉の三大偉人は塙保己一、渋沢栄一、荻野吟子だということを知る。日も暮れかかる頃に遠回りをして小鹿野町に立ち寄り、持ち帰り用の「わらじかつ丼」がお土産として追加された。長い行列ができて、食べるのを諦めて帰ったこともある店だという。