玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*回顧川柳

2016年01月11日 | 捨て猫の独り言

 待ち望んでいた年賀状が今年も届いた。ぎっしり印刷された川柳の数は50を超えている。これほど有効利用されたハガキは他にはないだろう。差出人はかつての職場での先輩である。職場旅行の宴席で私と彼はコンビを組んで二度ほど出演したことがある。柔和な彼が豹変して右手をひょいと上げてまくしたてるヒトラーは真に迫っていた。デショーベン、ダスフンデルなどが混ざった怪しげで流暢なドイツ語もどきを、私が支離滅裂にハケニケガアリ、ハゲニケハナシなどと翻訳した。

 最近は国会議事堂前に総理大臣の顔にちょび髭を描いた違法なプラカードが出現する。よくできていると感心すると同時に、私は二人の隠し芸のことを思い出すという次第だ。回顧川柳氏の奥方が経営するハンガリーの民宿を拠点にして、彼自身が企画した少人数の小型貸切バスによるハンガリーの田舎旅行に参加したことがある。中高教諭退職後は地方の大学で憲法を教え、2011年の7月に「ハンガリー手帳・ドナウ川牧歌紀行」を上梓した。(写真はクリックで拡大)

 

 上梓のことは知らずに、その年の12月に、四つん這いで生活している彼を信濃追分に見舞った。まず彼が見守る中を部屋の大掃除をしてそれから男三人で一夜を過ごした。一時帰国していた奥方は数日前にハンガリーに帰られたという。頂いたその本の扉には「私の妻と子供たちへ」と印刷されていた。今年のハガキに戻ると、近況も川柳になっている。▼寝て暮らす夢が適って寝たきりに▼白内障出会う女性はみな美人▼難聴で閑静な暮らしの夢適う。表面のわずかな余白に、難聴がひどくなり「ベートーベン並みだ」とイバッテ(?)いますと手書きしてある。

 

 心配していたが今年の回顧川柳のできは前年よりもよい。頭脳は衰え知らずのようだ。いくつか紹介したい。【定義】アベ政治これぞ存立危機事態 【奇貨】テロのたびタカ派はなにやら嬉しそう 【言い換え】戦争は昔は「事変」いま「事態」 【面妖な】憲法を読みもしないで変えたがり 【十八の自覚】選挙権得たぞ止めたぞ酒タバコ 【無法】辺野古でもマンションでも打つ無茶な杭 【勿体ない】使い捨て昔は消費いま雇用 【行政不服】新手詐欺政府が私人になりすまし 【聖夜】トナカイがドローンに驚く冬の空 【言葉】不都合は昔ご破算いま初期化

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