玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*琉球いろは歌

2015年03月12日 | 捨て猫の独り言

 琉球朝日放送は平成24年4月から1年にわたり毎週水曜日に「いっこく堂と名護親方の琉球いろは歌」を放送した。放送終了後まもなくして『こころに留めたい「琉球いろは歌」47の言葉』が出版された。放送局のスタッフが、番組製作と勝手が違う本の出版に取り組んだのは「琉球いろは歌」を継続して伝えようという情熱だった。

 贈られたこの本を手にして新鮮な驚きを感じた。まず先に述べたの出版のいきさつである。そして琉球王国の過去の在り様を改めて認識したことである。程順則は66歳で名護間切りの総地頭(市長)となり名護親方と称するようになるが中国名は順則といい、琉球名は寵文である。五回中国へ渡り中国の文化や学問を学び、四度めの訪中で「六諭衍義(りくゆえんぎ)」を印刷して持ち帰る。(写真は鷹の台駅付近)

  

 六諭衍義は薩摩藩より徳川吉宗に献上され、幕府の命により室鳩巣が和訳して後に道徳の教科書として寺小屋で使われた。六諭の教えとは、孝順父母、尊敬長上、和睦郷里、教訓子孫などである。普遍的、抽象的愛でなく、あくまで個別的、具体的愛である。名護親方は六諭の教えを多くの人に広めようと「八・八・八・六」の琉歌に詠み、いろは順に並べて出来上ったのが「琉球いろは歌」である。

 琉球語=ウチナー口(ぐち)は50代以下の世代のほとんどが話せなくなっているという。言葉や歴史を忘れる民は滅びるという危機感がこの本の出版の原動力の一つだ。いろは歌には「肝」と「油断」という言葉が多く出てくる。肝(ちむ)=心であり魂の宿るところだ。私の好きな一首は「井の春になてん 人の花咲め 年ど寄て行る 油断するな」この歌の「訳」は「同じ春になっても、人の心の花は咲かない。年をとるばかり油断しないように」とある。さらに「鑑賞」という詳しい解説で理解が深まる。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする