加地伸行著の「すらすら読める論語」という図書館の本を二日間ほど熱心に読んだ。著者は君子を教養人、小人を知識人と訳している。その本の中に私の囲碁の勝負に活かせる言葉と思ったものを二つ見つけた。「君子は器(うつわ)ならず」は「教養人は一技・一芸の人ではない。大局を見ることのできる者である」と訳している。
「過ぎたるは猶及ばざるがごとし」は「及ばず」ということばが、不足という事実を指すのではなくて、劣っているという価値を示す意味と思う人が多いので誤用が通用しているとして「ころあい(中庸)ではないという点では、多いも少ないも同じことだ」と訳している。「碁の神様」といわれて昨年百歳で亡くなった呉清源の言葉「碁は調和」と同じと私は考えている。
今年度のNHK囲碁トーナメントの決勝戦は驚きの顔合わせになった。準決勝で20歳の伊田篤史八段が実力者羽根直樹九段を、17歳の一力遼七段が第一人者の井山祐太棋聖を撃破して決勝に勝ち進んだ。どちらも初出場初優勝ということだったが伊田八段の優勝で幕を閉じた。優勝賞金は500万である。そして次年度出場者に16歳で女流タイトル2冠の藤沢里菜二段が選ばれるかどうか注目だ。
27日(金)は棋聖戦七番勝負の最終局が打たれた。井山棋聖が3連勝してこのまま押し切ると思われたが、挑戦者の山下敬吾九段が巻き返して3連勝したのである。囲碁七番勝負で3連勝から3連敗したケースは意外に多くてこれで10回目という。井山棋聖が3連勝3連敗1勝で棋聖3連覇を達成した。6局とも大接戦だったが挑戦者は最終局に悔いを残したようだ。優勝賞金は4500万である。