玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

原田芳雄・大鹿村騒動記

2011年08月04日 | ねったぼのつぶやき

 俳優・原田芳雄氏は気になる一人であった。最近車椅子上の人となり、試写会に現れた写真をみてその衰弱ぶりに私は驚かされた。彼の訃報に接したのはその8日後だったから、何としても完成作を見届けたいという執念が彼の命を保っていたのだろう。

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 その映画を先週末見に行った。長野県のある村で300年にも及ぶ歌舞伎公演が迫っていた。今や全国的規模で悩んでいる幾多の問題をここでも抱え、しかもリニア新幹線の誘致問題でもめにもめていた。何としても歌舞伎を絶やすまいと、主役を張っていた鹿料理店の「善」が村人の説得に回っていた。そこへかつて女房と駆け落ちしたおさな友達の「治」が、「コレを返す。俺と駆け落ちしたことも忘れ、オレのことを善さんと呼ぶんだ!」と連れて来た。取っ組み合いのケンカをしている男達を、18年間離れていた故郷で貴子は無表情で見ているだけだった。

 認知症の出戻り妻を抱え込まざるを得ず、女形役の負傷もあってイヨイヨ公演を断念せざるを得ない・・・となった折、貴子の口から歌舞伎の口上が憑いて出て・・・ツイに公演の運びとなった。原田自身が持ち込んだという企画を、監督、脚本、出演者とベテラン級の役者を揃え、大人の楽しめる悲喜劇コモゴモの娯楽作品に仕上げていた。病身をおしての撮影であったろうが、紅葉織りなす風景の中に、サングラスとテンガロンハットのいつもと変わらぬニヒルな原田がいた。葬儀の際、喪主の長男は「祭りの好きな人だったから三本締めで・・」と参会者に請い、皆は三本締めで送ったという。

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